アニメ『るろうに剣心』飛空発破を再現した時、人はそれを●●と呼ぶ。刈羽蝙也の戦闘術は実現できるのか?

昨年2021年の12月に、『るろうに剣心』の新アニメプロジェクトが発表されました。ティザーPVでは、“伝説再び”の文字とともに剣心が刀を抜こうとするシーンが公開されました。ジャンプスクエアにて連載中の北海道編がアニメ化されるのか、はたまたオリジナルストーリーが展開されるのかはまだ謎ですが、楽しみです!!

アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』が放送されていたのは1996~1998年と、もう20年以上も前のこと。もっとも新しく作られた『新京都編』でさえ公開は2012年と10年も前です。しかし、ティザーPVの約20秒で熱い記憶がふつふつと蘇ってきました。そして、思ったこと。それは……

必殺技ってやっぱり憧れる!!

『るろうに剣心』にはさまざまな技が出てきます。しかし、そのどれもが人間技ではありません。初期の敵である鵜堂刃衛の“心の一方”のように目から放った剣気で相手を行動不能にするなんてできませんし、剣心にあっさりと倒された石動雷十太の使う“飛飯綱”(振った刀から真空の刃を飛ばす技)もできそうにはありません。

しかし、“努力次第では身につけられるんじゃね?”と感じる技がひとつだけありました。それは、刈羽蝙也の技“飛空発破”です!!

剣心の宿敵である志々雄真実の配下のひとりで、選りすぐりの精鋭部隊である十本刀に所属する刈羽蝙也が使うのが“飛空発破”で、文字通り空を飛んで闘う技です。

蝙也は極限まで体重を軽くした体に、コウモリの羽根のようなマントを纏っていて、その内側に複数のダイナマイトを仕込んでいます。闘うときには少量のダイナマイトを爆発させ、その爆風をマントに受けて空に舞い上がります。

作中では、油断のせいもあり十歳の少年である弥彦に負けてしまう蝙也ですが、自在に空を飛べて、そこから斬撃と爆弾で攻撃できれば、実際の戦いではかなり強いに違いありません。やることは“とにかく痩せて軽くなって、爆風で飛びながら戦う”。これくらいなら、やろうと思えばギリギリできるのでは!?

超人能力や超絶技巧は無理でも、痩せるだけなら何とかなる。(と言いつつ、ダイエットをしても続いた試しのない筆者ですが)蝙也の技くらいなら身につけられそうだと、得体の知れない自信がみなぎってきます。

空を飛ぶ生き物は鳥や昆虫などたくさんいますが、人間とは体のつくりが違います。たとえば、鳥は空を飛ぶための翼と羽毛を持ち、骨も含気骨(がんきこつ)という軽い構造に進化しています。これらは人間には真似できません。

そこで、蝙也の外見からも想像しやすいコウモリの体の構造を参考に飛行方法を考えてみましょう。コウモリは人間と同じ哺乳類ですから、体の作りも人間に近いはずです。なお、飛空発破自体は“爆風で空を舞う”というメカニズムなので、あくまで翼のサイズのみを参考とします。

コウモリの中でも最大であるオオコウモリの仲間について調べてみると、フィリピンオオコウモリは体長約30㎝、翼幅が150㎝ほど。画像検索をしてみると、確かにデカい!!

羽根が翼幅を底辺、体長を高さとする二等辺三角形だと仮定して面積を求めると、下記の通りのしk

150cm×30cm÷2=2,250㎠

より、おおまかな羽根の面積は2,250㎠となり、この大きさの羽根があれば、1~1.5㎏ほどある体重を持ち上げて飛ぶことができると推定できます。なお、以降は計算のためコウモリの重みを中央値の1.25㎏と設定します。

蝙也とコウモリとの体重の関係を計算すると、28kg(蝙也)÷1.25kg(コウモリ)=22.4より、およそ22.4倍程度の面積を持つ翼があれば空を飛べるかもしれません。

アニメ『るろうに剣心』飛空発破を再現した時、人はそれを●●と呼ぶ。刈羽蝙也の戦闘術は実現できるのか?

2,250㎠×22.4=50400㎠ 50,400㎠=5.04㎡

そこそこの大きさですね。ここから翼幅を概算します。蝙也の身長は155cmなので

X(翼幅cm)×155=50400㎠ 50400㎠÷155=325.16cm(小数点第2位以下四捨五入) 325.16÷2=162.58cm

つまり、片側に160cmほどの翼があれば、蝙也の体重を浮かべることができるはず……。片側160cmくらいの翼なら背負うことも難しくなさそうです。

空を飛ぶ戦闘術が現実的になってきましたが、コウモリについて調べていると気になる記述がありました。コウモリは洞窟の天井などに逆さにぶら下がっているイメージがあると思います。あんな態勢で過ごして頭に血が上らないかと心配になりますが、あの姿には理由があるのです。

コウモリは飛行を可能にするために翼を支える胸部以外は筋肉をほとんど削った状態の体をしています。そのため、足も非常に細く、立ち上がって自分の重みを支えることもできません。歩くときは手足を使って這いずるような姿になります。休むときも立っていられないので、あのようにぶら下がりの姿勢になります。

蝙也に戻りましょう。蝙也は身長155cmに対して、体重は28㎏にまで絞っています。しかも、人間はコウモリのように胸筋だけ残して痩せることはできませんから、全身が痩せていきます。

参考のために蝙也のBMI(体格指数)を計算すると“BMI=28(㎏)÷(1.55)2(m)2=11.65“となり、極度のやせ型となります。BMIは22で標準、18.5以下が低体重となり、16未満だと痩せすぎです。つまり、11.65は異常な数字だと言えます。場合によっては命にかかわり、入院治療が必要な状態です。

また、2017年度の国民健康・栄養調査によれば、身長155cm・20代の人の平均体重は55.6kg。20代男性の平均筋肉量は44%とのことなので、重量は単純計算にして24.464kg、その他、脳の重さは体重の約2~2.5%なので約11kgとなります。

……前述しましたが、蝙也の体重は28kg。比喩表現でない全身筋肉の体でも筋肉量は平均を少し上回る程度。爆風に煽られたら制御不能になって、マントと一緒に吹き飛ばされてしまうような気がします。というより、蝙也は立つことが可能かも怪しいです。

ちなみに、ある程度現実的な体重として平均体重を少し割る程度の50㎏、そして翼が大きくなるほど翼自体の重量も増加することを考慮して装備重量20㎏(全備重量70㎏)の重さを想定して翼幅を計算してみると下記のとおり。片翼約4m、両翼約8mです。

70kg÷1.25=56 2,250㎠×56=126,000㎠ 126,000㎠÷155=812.90cm(小数点第2位以下四捨五入) 812.90cm÷2=406.45cm

一般的なハンググライダーのサイズ(翼幅)は9mほどで、機体重量20㎏ほど。なんと、コウモリの羽根を参考に数値を概算した結果、現実に存在するハンググライダーにたどり着いてしまいました。現実に存在する物ならば理論上は飛空発破が可能になりますが、戦闘を行うのは無理そうですね。

調べる前は“努力次第では身につけられるんじゃね?”と思っていた飛空発破ですが、今回の考察から想像を絶する内容のダイエットや訓練があったと思われます。これは常人には無理そうですね。刈羽蝙也さん、見くびってすみませんでした!

飛空発破のすごさが分かった今、剣心や左之助たちの技がどれほどすごいのかは語るまでもありません。そんな、すごくてカッコイイ技がオンパレードの『るろうに剣心』。新アニメプロジェクトが動き出しているのだと思うとわくわくしますね。

詳細はまだ分かりませんが、新アニメを存分に楽しむために、今のうちに原作準拠の東京編、京都編、追憶編くらいは見なおして、おさらいしておきたいと思います!!

『るろうに剣心』新アニメプロジェクト ティザーサイト アニメ『るろうに剣心』公式サイト “バーズアイビュー”公式サイト 日本ボクシングコミッション(JBC)公式サイト 世界雑学ノート:“フィリピンオオコウモリの大きさ” Wikipedia:『るろうに剣心‐明治剣客浪漫譚‐』、オオコウモリ、飛行、BMI、神経性無食欲症 国民健康・栄養調査(2017年度) 脂肪量・筋肉量・基礎代謝量|田園都市高血圧クリニック かなえ|内科・循環器内科

※画像は公式サイトをキャプチャーしたもの。(C)諫山創・講談社/“進撃の巨人”The Final Season製作委員会

文・渡辺晴陽