健康診断でコレステロールや中性脂肪が高いと指摘される人は多い。これは脂質異常症という生活習慣病だ。コレステロールや中性脂肪を下げるにはどうすればいいのか? コレステロールと中性脂肪の違いとは? メタボリックシンドローム(メタボ)を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。今回は知っているようでよく知らないコレステロールと中性脂肪の違いとそれぞれの対策について教えていただこう。
(イラスト:つぼい ひろき)こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。生活習慣病の中でも、高血圧の次に多く、予備群も含めると国内で2000万人以上もの人が該当するのが「脂質異常症」です。脂質異常症とは血液中の脂質、すなわち「コレステロールや中性脂肪」に異常がある病気。そこで今回はコレステロールと中性脂肪についてお話ししたいと思います。
脂質異常症には4つのタイプがあります。「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが多い「高LDLコレステロール血症」(140mg/dL以上)、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが少ない「低HDLコレステロール血症」(40mg/dL未満)、善玉以外の総コレステロールが多い「高non-HDLコレステロール血症」(170mg/dL以上)、中性脂肪が多い「高トリグリセライド血症」(150mg/dL以上)です。
中には4つすべて当てはまる人もいますが、1つでもあれば脂質異常症と診断されます。高血圧と同じく、脂質異常症になると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中で命を落とすリスクが高くなります。
このうちHDLコレステロールが少ないことと中性脂肪が多いことは高血圧や高血糖と同じく「メタボ(メタボリックシンドローム)」の要素に入っていますが、多くの人が健診で引っかかるLDLコレステロール値が高いことはメタボの基準には入っていません。そのためLDLコレステロール値が高くても軽く考える人もいるのですが、それは単に「内臓脂肪の蓄積から生じるリスクではない」というだけ。LDLコレステロール値が高いと、それだけで動脈硬化が進みます。
一般に太っている人が体重を減らすとHDLコレステロールと中性脂肪は改善しますが、LDLコレステロールは体重と関係ないことも多いので改善するとは限りません。そのため腹部肥満(へそ回りが太い)が前提のメタボとは別というだけなので、くれぐれも誤解しないようにしてください。さらに言えば、やせていてもLDLコレステロールが多いと脳卒中や心筋梗塞のリスクがあるのです。
コレステロールと中性脂肪はどちらも同じ、血液の中のあぶらです。あぶらを水に混ぜたら分離するように、コレステロールや中性脂肪を血液中に置くと分離してしまいます。そこで、これらを運搬するため、「リポたんぱく」というたんぱく質のカプセルの状態で血液の中を流れています。どちらも体にとって絶対に必要なものですが、「仕事」が全然違います。この違いを理解しておくと、対策の違いも頭に入りやすいのではないかと思います。
まず、中性脂肪ですが、これは体を動かすガソリンのような役割をしています。体のエネルギー源を備蓄するための燃料というイメージです。焼肉をたくさん食べた翌日に血液検査をした人の血液を置いておくと白濁してくることがあります。その原因は中性脂肪。このように焼肉や天ぷらなどの油物を食べると中性脂肪は上がりますが、それだけではなく、糖質やたんぱく質も、余れば中性脂肪になります。例えば、果物やまんじゅう、ごはんやうどんも、その日に使われなければ中性脂肪となって蓄えられます。つまり、何を食べても余れば最終的には中性脂肪になるんですよ。