ペンタブレットとは、スタイラスペンで描画面に文字や絵を入力するタブレットのこと。プロのイラストレーターやデザイナー向けの製品のイメージがありますが、手書きで視覚的にポイントを伝えることができるため、オンライン会議やリモートワークにうってつけのアイテムでもあります。今注目を集めるペンタブレットの中からWirecutter編集部が初心者向けに厳選したおすすめ製品をご紹介します!
お絵描きするならペンと紙が一番ですが、スケッチやイラストをスキャンしてアップロードするのは面倒。ペンタブレットはクリエイティブな作品を「最初からデジタル」で描くことにより、スキャンしたりアップロードする手間を一掃してくれる便利デバイスです。とはいえ用途が限定的なのでハイエンド製品はビギナーには手が出しにくく、安価なものはセットアップや使い方が難しいため意外と選びにくいもの。そこでWirecutterではプロのアーティスト5名にペンタブレット64機種と通常のタブレット8機種を実際に試してもらい、初心者に最適なペンタブレットを厳選。最初の1台としておすすめの2機種をご紹介します!
コスパ最高で長く愛用できるおすすめナンバーワンのペンタブレット:Wacom Intuos
最高の「初心者向けペンタブレット」。Intuosは互換性が高く、カスタマイズの幅広さと正確なグラフィックが自慢の逸品。ビギナーが100ドル(約1万1000円)未満で購入可能な最高のタブレットです。
Wacom Intuosは多機能で 長く愛用できる、コスパ最高のタブレットです。スケッチや描画を楽しめるCorel Painter Essentials 8や写真編集ソフトのCorel AfterShot 3(いずれも期間限定の体験版)を搭載し、付加価値がさらにアップ。ペンの読取範囲は6×3.7インチ(スモールサイズ)で正確性とレスポンスも◎。コンパクトでデスクでも場所を取らず、ラップトップと一緒にリュックに入れてもかさばりません。接続はUSB経由なので、Bluetoothをご希望の方はワイヤレス版をおすすめします。
学生さんにイチオシの優秀ペンタブレット:One by Wacom
学生さんには最適なとっても使いやすい、お手頃なペンタブレット。
OneはWacomで最安価格の初心者向けペンタブレット。信頼性の高いグラフィックタブレットをお探しの学生さんに最適の製品です。セットアップは簡単で、6×3.7インチ(スモールサイズ)の描画面はまるで紙のような書き心地。これならアナログからデジタルへ抵抗なく移行できそうです。OneはIntuosより安価ですが、描画領域のサイズは変わりません。
「初心者向けペンタブレット」をおすすめしたい方
本ガイドでご紹介する製品は、これからデジタルアート製作や写真編集に携わっていく方に最適のアイテムです。もちろん、オンライン会議でのプレゼンなど、遠く離れた相手と視覚的なコミュニケーションを取りたい場合にも◎。
マウスやラップトップのトラックパッドでは自分のサインをするだけでも一苦労ですし、詳細なスケッチや写真の編集は至難の業です。ペンタブレットはスタイラスペンで描いた内容を、マウスやトラックパッドよりもはるかに高い精度でPC画面に反映してくれるので、イラストやアニメ、画像編集などどんなものも自然で快適な描画体験を楽しめます。 Windows PCやMacと接続可能で、今後長きにわたって幅広い用途に愛用できるのも魅力。今回のおすすめ製品は「ペンタブレットに興味はあるけど、使いもしない機能に大金をかけるのは嫌」という方のためのデバイスです。
本ガイドは初心者向け製品ということで、iPad ProやMicrosoft Surface ProといったタブレットやWacom Cintiqシリーズのようにディスプレイのついたハイエンド製品は対象としていません。というのも、デジタルアートの世界への一歩を踏み出そうという方にはまずお手頃価格のペンタブレットを使ってみて、自分のニーズに合っているかどうか試していただきたいからです。
今回選考に参加していただいた専門家も、やはり同程度のタブレットから始めた、という意見が多かったです。また、Livescribe のスマートペンシリーズやEvernote Notebookのように、紙に描いた絵をPCに変換するタイプのデバイスも扱っていません。
今回は以下の基準でおすすめ製品を厳選しています。
・筆圧感度
・互換性と安定性
・価格
・サイズ
・ペンの種類
・ボタンと操作性
・無料ソフトウェア
・解像度
・マルチタッチと傾き認識
コスパ最高で長く愛用できるおすすめナンバーワンのペンタブレット:Wacom Intuos
Wacom Intuosは価格もお手頃で、ユーザーのスキルとともに成長してくれる可能性を秘めた、初心者にぴったりの1台です。同じ価格帯でこれより優れたオプションはほかにありませんでした。セットアップは簡単で、はじめから正確性もレスポンスも問題なし。付属のペンは長時間描画していても十分快適です。IntuosはWacomのタブレットの中でも手の出しやすい価格帯でありながら全体的に高品質で、ハイスペックな機種と比べても遜色ないパフォーマンスを提供しています。トライアル期間つきのソフトウェアが複数付属しており、実際に試してから自分に合うものを選べるのは便利です。
他製品と比べてIntuosは制御性が高く、ドライバの問題や入力遅延などはありません。筆圧レベルは4096で、線の濃さや太さもしっかり認識してくれました。
一部の競合製品と比べるとコンパクトですが、6×3.7インチのアクティブエリアは評判上々。ラップトップと組み合わせて使用するには小さい方が便利、という声もありましたし、家ではミディアムサイズの機種を使って移動時にはIスモールサイズを持ち歩く、という方もいるようです。
Wacomのモデルにはドットグリッドが施されているので目盛代わりに使えたり、直線を書くときの目安にもなるので意外と便利です。描画面のテクスチャはまるで紙に鉛筆を走らせるような感覚。他製品のように、滑らかでプラスチックのようなツルツル面もいいですが、リアルな筆感はデジタルへの抵抗感を軽減してくれそうです。
他の最新機種同様、Intuosでもバッテリー不要のスタイラスペンを採用。標準芯3本が付属し、替え芯はペン内部に収納することができます。標準芯は5本1,100円(税込)で追加購入可能で、抵抗感のある硬筆の書き味を楽しみたい方はハードフェルト芯も同価格で販売しています。
ペンとタブレットのカスタマイズを楽しめるのもIntuosの魅力。WacomのDesktop Centerソフトウェア経由でサポートやドライバが更新できるほか、タブレットとペンの機能のカスタマイズ、バックアップ、さらに復元することもできます。ペンの先端の感触や筆圧の感度を設定することも可能です。鉛筆でいうと、ソフトタッチの2Bと筆圧薄めで硬い印象のHBを使い分ける感じです。ダブルクリックや検知感度を調整することもでき、これだけ微妙なタッチまでプログラムできる製品はとても珍しいです。
ペンの各ボタンとタブレットのキーはショートカットキーを割り当てることができ、ズーム・右クリック・消去・アプリ切り替えといった操作が簡単に行なえます。しかも各プログラムに合わせてカスタマイズできるので、たとえば特定のキーをPhotoshopでは「Web用に保存」のアクションに、Corel Painterではブラシの切り替えに、とソフトごとに設定できます。
気になる点
2020年2月、ソフトウェアエンジニアの Robert Heatonさんは自身のブログで「Wacomはソフトウェアを介してユーザーの使用状況(使用するアプリを含む)から多くのデータを収集している」とプライバシー上の懸念を表明しました。
これに対しWacom側はソフトウェアからの情報収集は認めつつ、「品質保証と開発の目的に限る」と声明を出しています。さらに同社はタブレットやソフトウェアアプリケーションから「情報のサンプル」を収集しているほか、WacomデスクトップセンターとWindowsのコントロールパネル、macOSのシステム環境設定からも「基本的なアプリ使用状況データ」を集めていると公表しています。
このプログラムをオフにしたい場合は、以下の手順をご参照ください。
1. Wacom Desktop Centerを開く
2. 「もっと」リンクをクリック
3. 「プライバシー設定」をクリック
4. Wacomの体験プログラムに「非参加」にする
Intuosには4つのタブレットキーがありますが、この価格帯のタブレットとしては数が少なめ。こうしたキーはサイドに設置されている場合が多いのですが、Intuosは描画面の上部に置かれており、描きながらだと若干押しにくいかも。キーボードのショートカットとしてボタンを頻用する場合は、この配置がネックになるかもしれません。ただ初心者の場合、どちらかというとタブレットキーよりもペンのボタン(カスタマイズ可能)を使うことが多いと思いますので、ボタンの組み合わせで使用頻度の高いショートカットや作業を十分カバーできるはずです。
Intuosにはマルチタッチ機能はありませんが、タブレットをトラックパッドとして使う場合をのぞき、特に必要性はなさそうです。同じく未搭載のマルチタッチや傾き認識も、上級者向けの機能といえるでしょう。
学生さんにイチオシの優秀ペンタブレット:One by Wacom
WacomのOneとIntuosは機能が似ており、どちらをおすすめナンバーワンにするか、実は最後まで悩みました。最終的には筆圧感知レベルの高さとカスタマイズボタンがIntuosの1位の決め手になりました。逆にいえば、この機能がないぶん価格が安くなっていますし、ほかの機能はしっかり備えているので学生さんはOneを買った方がオトクかもしれません。
今回テストした機種の中でもOneはもっともセットアップが簡単で、はじめからしっかり機能してくれます。ペンはIntuosとほとんど変わりなく、数時間お絵かきしていても苦になりません。OneはWacomのタブレットのなかでも最安モデルですが、Intuosと同じく無料トライアル期間つきのソフトウェアが複数付属しており(Chromebookから登録するとClip Studio Paint Proを3カ月無料試用可能)、自分に合ったツールを判断することができます。Kami、Explain Everything、Limnu、Collaboardといった学生・教師向けのソフト利用できます。
今回のテストで、Oneの使用体験はIntuosとほとんど変わりありませんでしたが、筆圧感度だけはOneが2,048とIntuos(4,096)の半分程度。とはいえ感度の違いが気になることはありません。 サイズもIntuosと同じくコンパクトで、表面はドットグリッド仕様で紙のようなテクスチャに。ペンには2つのカスタマイズ可能なボタンが置かれ、芯は交換可能。
まだまだある! 注目したいペンタブレット
Veikk A15 Proは箱から出したらすぐ使えるのが嬉しいところ。約10×6インチの描画面に8,192レベル(Intuosは4,096)の筆圧感度を備えています。以前、ミディアムサイズのタブレットとしておすすめしていましたが、数回テストを重ねたところドライバの再ダウンロード時に問題が発生し、手順やドキュメントもわかりにくかったのがマイナスポイントに。ニューヨークタイムズのIT部門に協力してもらったのですが、それでも問題解決には至りませんでした。
Artisul M0610Proも大型タブレットで、筆圧感度も8,192とかなり高いです。しかし、タブレットを接続してドライバをダウンロードすると、タブレットでの描画やクリックが効かなくなるというトラブルがありました。カスタマーサポートに連絡して4日後に担当者から回答を得ましたが、そのアドバイスでは問題を解決することができませんでした。
Parblo A610 Plus V2はVeikkのタブレットとほぼ同じサイズと感度ですが、セットアップはVeikkのほうがシンプルでスピーディでした。今回のおすすめ上位機種が手に入らなかった場合、もしくはこちらの製品が値下がりしているなら、初期設定のプロセスさえ我慢すれば1台目のタブレットに適しています。
Huion Inspiroy Dial Q620M、Wacom Intuos Pro S、XP-Pen Deco Proはいずれも高品質ペンタブで追加機能も豊富ですが、価格もおすすめ上位の2倍から4倍に跳ね上がるので、まだ初心者の方にはコスパが良いとはいえないでしょう。
ほかにもGaomanやTurcom、Ugeeといったメーカーの最新モデルをはじめ、複数のペンタブレットを調査してみましたが、レビューの反応が悪かったり、機能がイマイチだったり、ペンがバッテリー式だったりとマイナス面が目立ったので今回は選出外となりました。
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