リアル・バトルロワイアル。
5月3日の朝、人気オンラインゲーム『フォートナイト』を開発するEpic GamesとAppleの公判が始まりました。昨年夏に「フォートナイトの乱」を繰り広げたデベロッパーと巨大企業との裁判は、開始早々、阿鼻叫喚の大炎上に見舞われました。
電話回線での傍聴解禁がアダに…。ミュート無効で言いたい放題。
今回の裁判はその注目度の高さから、電話回線を通じての傍聴が認められていたのですが、まずはその回線まわりがうまく稼働しませんでした。ようやくつながったと思ったら、今度は傍聴者の回線がミュートになっていなかったため、AppleやEpic側の支持者が思い思いに発した言葉が筒抜けになり、裁判は大混乱に陥りました。
ある人は「Epic Games! Epic Games!」と声援を飛ばし、またある人は「ママに、受話器を取らないでね、って言わなくちゃ」とどうでもいいことをつぶやき、別の誰かは「(Epic Games CEOの)ティム・スウィーニーは、自分がやっていることを誰よりもわかっています。一度しくじれば、『フォートナイト』はiOSには戻りません。ちなみに、この音声はライブです」などとコメント。もう、収拾着かない感じです。
追加で敷かれた回線でもオーディオ問題が発生。公判開始から約35分後、Epicの法務チームが冒頭陳述を行っている最中、突然傍聴の音声が途切れました。公判の電話傍聴音声をライブ配信していたジャーナリストのジェフ・キーリー氏のチャット欄は「音声が消えた」というコメントで溢れました。と、そこでオーディエンスの1人が「これ電話のミュート無効じゃない?」と気づいたのです。
彼は「FORTNITE SUCKS(フォートナイトなんで最低だ)」とマイクに向かって叫びました。「おいおい、何にも聞こえねーぞ! オーディオが死んだのか!?」
さらに彼は「みんな俺の声聞こえてるか?」とあおります。電話傍聴している人は皆、ミュートが無効になっていたようですが、その彼はさらに「スウィーニーがゲイだと思うやつ、手を挙げてー」「ああ、俺はこれで地獄に落ちるかもなあ」などと小学生レベルで好き勝手にしゃべりまくりました。もはや公判どころではない、ひどいカオスに。
きっかけは昨年8月の「フォートナイトの乱」
そもそも事のはじまりは2020年8月。当時App Storeでアプリを配信するデベロッパーは、アプリ内のトランザクションで得た収益の30%をAppleに支払う義務(現在は一部大手を除いて15%に減額)がありました。Epic Gamesは、このいわゆる「Apple税」に反抗し、『フォートナイト』にApp Storeを経由しない直接決済を導入したのです。
規約に違反した『フォートナイト』はAppleによってApp Storeからバンされましたが、Epic Gamesはこれも織り込み済みでした。あえてAppleに勝負を挑むことで、その手法を「反トラスト法」という名のスポットライトの真下に引きずり出すのがEpic側の目的だったのです。ユーザーを置いてきぼりにした両社の争いは、今もまだ続いています。
今後は電話傍聴ではなく、ライブ配信にすべき…?
音声が途絶えてから約10分後、裁判所はオーディオ復活に成功しました。しかし、それからほどなくしてまた別のギャラリーが「『フォートナイト』を自由にしないで!」とカットイン。
それでも1分ほど弁護士は弁論を継続しましたが、またすぐ同じ人物がマイクに大きな吐息音を吹き込んで酔っ払った列車(?)のような声を発したり、「Reddit、Reddit、Reddit」と叫んだことで再び中断。
そこからはもう、音声の取り合い合戦に。2人目の弁護士が話し始めると、同じ人物がまた支離滅裂なことをがなりたて、弁論が中断。静寂が戻り、またヤジが飛び…ということが繰り返されました。
その後、ようやく裁判所側がすべての聴衆をミュート化する方法を見つけ、混乱は収まりました。ああ、こうして文字にしているだけで目が回りそう。他の公聴会同様、今回の公判もYouTubeページでストリーミングしたほうが良かったのかもしれません。いや、絶対そう…。今後の公判では技術的な問題をしっかり解消するか、ライブ配信の形にするか、判断が迫られることに。
そうでなければ今回のように動物の鳴き声のような声で裁判が中断したり、小学生のような稚拙なヤジであふれかえったり、と『フォートナイト』も顔負けの乱戦が繰り広げられることになるでしょう。