納棺師として勤務するおくりびと青木(提供:松竹芸能)
「バラバラのご遺体も必ず人間の形に…」“納棺師&芸人”二足のわらじを履く青木さん(35)がとてもネタにできない「知られざるおくりびとの日常」から続く【写真】この記事の写真を見る(13枚) 2008年に公開された映画『おくりびと』で知られるようになった、「死」への旅立ちを手伝う職業“納棺師”。松竹芸能所属のおくりびと青木さん(35)は芸歴9年目のお笑い芸人として活動しながら実家である福島県の葬儀会社で納棺師としても勤務する“リアルおくりびと”だ。 お笑い芸人と納棺師、振り幅の大きい仕事をこなすおくりびと青木さんとは一体、どんな人物なのか。2足のわらじの苦労や知られざる納棺師の仕事内容、さらに自身が経験した恐怖体験やなかなか聞けない近年の葬儀事情まで話を聞いた(全2回の2回目。 最初を読む )◆ ◆ ◆
告別式中に「一発ギャグやってもらっていい?」
――納棺師でありながらお笑い芸人もやっていることについて、周囲の反応はいかがですか。おくりびと青木 同じ納棺師の方々からは応援していただいています。ただ正直な話、SNSとかを見ていると「お葬式の仕事をしている人がお笑いをしているのってどうなの」とか「人の不幸をネタにしているのではないか」という感じで注意をいただくこともあります。――お笑い芸人もやられていることは、ご実家の地域の皆さんはご存知なんですか。おくりびと青木 おかげさまでこの地域の方には知っていただいています。このあいだも告別式中にも関わらず「一発ギャグやってもらっていい?」とフリが飛んできました(笑)。小声ですけど、全力でやったら思いっきりスベりました。「そりゃウケるわけないよね」って感じですよね。向こうでみんな悲しんでいるのに、ここで何やっているのって。
お葬式とお笑いのテンションの切り替えの難しさ
――お笑い芸人と納棺師の2足のわらじで苦労するのはどんなところでしょうか。おくりびと青木 やっぱり福島と東京を行ったり来たりする生活ですね。福島で告別式をやった後に東京でオーディションというパターンもあったりするわけですよ。それとは逆に東京でライブを終えた後に福島でお通夜があるというパターンもあるので、行ったり来たりするのがまず大変です。基本的にいつも高速バスを利用しているんですけど、片道大体6時間ぐらいかかりますね。 あとは、当たり前ですがお葬式のテンションとお笑いのテンションは全く違うので、テンションの切り替えがすごく難しいです。お笑いのライブ後でテンションが上がった状態のままお葬式の場に出た時に「どうもー! このたびはー!」みたいな感じで大きい声を出してしまって、めちゃくちゃ怒られた時もあったんですよね。そのテンションの切り替えがどうしてもうまくいかないです。
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