本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは引き続き、Googleが日本で発売したセキュリティカメラ「Google Nest Cam」。Googleがこの製品をどのようにして機能強化しているのかに迫る。
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過去からある「セキュリティカメラ」は、文字通り「カメラ」だった。カメラが設置された場所から見える映像を記録しており、そこになにが映っているのか、ということを判断するのはあくまで人間だった。
だが、スマートホーム向けにAmazonやGoogleが提供し、アップルが「HomeKitと連携するカメラ」に搭載しているのはそれだけにとどまらないものだ。
カギを握っているのは画像認識技術だ。なにが写っているかをAIが判断し、必要な部分だけを記録しつつ、速やかに警告すべき場合にはスマートフォンなどに通知を出すようになっている。
店舗のセキュリティカメラのように「記録し続ける」ことは自宅の場合は意味がなく、必要に応じて自分に変化を通知してくれることが望ましい。だから、機器内に組み込まれた「オンデバイスAI」でカメラになにが写っているのかを認識し、ネットサービスを介してスマホなどに通知するという「一貫した仕組み」が必要になってくる。
そうした部分は、Amazon・Google・アップルのようなIT大手が得意とするプラットフォームビジネスである。どの企業もセキュリティ強化・プライバシー強化については「有料のネットサービス」を用意するようになっている。ハードウェアを売るだけでなく、ネットサービスも有料で売れるくらい期待されている市場、ということでもある。
そうなると各社の差別化ポイントは「いかにサービスを充実させるか」「いかにAIの精度を高めるか」ということになる。
日本の場合、このジャンルに参入しているIT大手はGoogleだけだが、アメリカ市場で磨いた技術で、日本国内にある家庭向けセキュリティカメラ市場を圧倒しようとしている。
おもしろいのは、AIを育てるために「現実以外」も使っていることだ。Googleはゲーム用のグラフィックエンジンを開発している「Unity」とも提携している。Unityによって家の内外で考えられるシーンを大量にリアルなCGとして作り、それをAIが学習するための情報として使うことで精度を上げているのだ。
学習に使われたCGの量は2500万枚以上とされており、それだけ大量の映像を短時間に用意するには、現実の映像だけでなくCGを活用する必要があった……ということなのだ。また、CGを使うのであれば、誰かのプライバシーを侵害することに留意しながら映像を集める必要がない、という点も重要だろう。
今のCGが現実に近いリアルさを実現できるのは、ゲームを見ればよくわかるはず。そうした畑違いとも思える要素を機能アップに生かす発想もまた、Googleの柔軟さを示すものといえそうだ。
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