《新技術で拓く》スマート農業 担い手問題の切り札に ICTで農地管理、省力化

 情報通信技術(ICT)などを活用し、省力化や生産性を向上させる「スマート農業」。農地や農作業の情報をアプリで管理したり、タブレット端末でハウス内の環境を確認できるシステムを駆使したりと、群馬県内の農家でも導入が進む。農業分野が直面する高齢化や後継者不足といった課題を解決する切り札としても注目される。

かっこよく

 「担い手が高齢化する中、デジタル技術を活用していくことが農業の生きる道だと思う」。昨年11月下旬、県内企業が自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み事例を紹介した発表会。その舞台で、稲作に取り組むアグリサポート(みなかみ町)の本多義光代表(70)は力強く語った。

 数々のコメ品評会での受賞経験がある本多代表は、新治地区を中心に広大な面積の水田を管理する。3年ほど前に農業支援アプリ「アグリノート」を導入し、これまで紙の書類に記入していた水田ごとの生育状況や肥料の投入量、草刈り時期などをアプリで記録するようにした。スマートフォンで情報を一目で確認できる上、いつどんな作業をしたかを社員と共有でき、少人数でも多数の水田を効率良く管理できるようになったという。

《新技術で拓く》スマート農業 担い手問題の切り札に ICTで農地管理、省力化

 同じ場所を耕してしまうといった課題も、トラクターに衛星利用測位システム(GPS)を装着することで解決できた。トラクターが通った場所をモニターで確認し、未耕作箇所の「見える化」につなげた。本多代表は「今までの農業をしていたら、若い人に興味を持ってもらえない。かっこいい農家を目指したい」と話す。

環境制御

 富岡市のバラ生産者、今井善圓(よしのぶ)さん(65)は、ハウスの環境制御の自動化に取り組んでいる。バラを育てるハウス7棟では温度や湿度、二酸化炭素(CO2)の濃度などをセンサーで測り、タブレット端末で常時把握している。

 換気装置や噴霧器といった設備は、計測したデータを基に自動で稼働する。窓を開閉したり、細かな霧を噴射したりと、適切な環境を整えてくれる。

 離れていてもタブレット端末でハウス内の環境を確認できるほか、遠隔での操作も可能だ。作業の省力化だけではなく、年間を通して品質の良いバラを安定生産することにつながった。

 取り組みが評価され、第30回花の国づくり共励会花き技術・経営コンクール(日本花普及センター主催)では最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。今井さんは「前年との比較などデータを分析することで、経営の問題点を把握することができることもプラス」と話した。

 【メモ】県は昨年3月、2021年度から5年間の農政の方向性を示す「県農業農村振興計画」を策定した。高齢化などを背景に、農業の担い手不足が深刻化する中、産地の将来を見据えてスマート農業の普及を進めることなどを柱とした。実演や講演などを通じ、情報発信を強化する。