諸外国に比べ、 日本人の「起業家精神」が低い原因とは リンダ・グラットン氏が指摘する、 日本の起業環境の不十分さ

働き方が変化した昨今、人々が「給与額」の他に求めるものとは

森まどか氏(以下、森):さて、最初に伺いたいのですが、リンダさんからもコロナパンデミックの話がありました。テレワークになり、「働き方」ということであれば自由度が増して、推進したと考えられるのに、日本ではビジネスや社会と人々が分断したといった面もあるんですね。このような今の日本の状況を、リンダさんはどのように捉えていらっしゃいますか。

リンダ・グラットン氏(以下、リンダ):ありがとうございます。企業は今、仕事を再発明する機会を得て、世界中の企業がそれを実行しています。私の顧問会社は世界中の多くの企業と仕事をしていますが、彼らも仕事のやり方を再発明しようとしています。

例えば今、地域の人たちがオフィスを利用できるように、企業はオフィスを近隣の人々が入れる場所にしようと考えています。また、サバティカル制度を導入して、5年に一度、1ヶ月間働かなくてもいいようにしたらどうか? という意見もあります。

諸外国に比べ、
日本人の「起業家精神」が低い原因とは
リンダ・グラットン氏が指摘する、
日本の起業環境の不十分さ

ほかにも、時間についての考え方をもっとクリエイティブにしようという意見もあります。例えば労働時間を長くして、週末に長く休めるような圧縮時間を設定することも可能でしょう。このように今、私たちの働き方に関する創造性が大きく高まっているのです。

欧米の企業は、人々にとって本当にいい取引をするためにお互いに競い合っています。日本で今、何が起きているのかは知りませんし、もちろん日本はまだパンデミックから抜け出していません。

しかし私がプレゼンテーションで述べたように、現在ヨーロッパのほとんどの地域では、50パーセントの人が次の仕事を探しています。彼らが求めているのは、「柔軟性」というニーズに応えてくれる会社です。

投資銀行や法律事務所は別として、英国では一般的には「以前のような仕事には戻りたくない」と考えています。人々はより柔軟性を求めているのです。このことが、優秀な人材を獲得するための競争の源泉になると思います。

今、私たちは人材獲得競争の中にいます。この人材争奪戦では、企業は単に給与額だけでなく、柔軟性に関する取り決めがどのようなものであるかを競うことになるでしょう。