米国時間の12月18日、Amazon、Apple、Google、Zigbee Allianceが、スマートホームデバイスを対象とした共通の通信規格の推進に取り組むワーキンググループ「Project Connected Home over IP」の結成を発表した。「スマートホームデバイスは安全で、信頼性が高く、メ-カー違いなどの垣根を越えてシームレスに使えるべきである」という共通の信念に基づき、消費者の利便性を高め、スマートホーム機器を製造・販売するメーカーの開発難易度を引き下げて、コネクテッドホーム市場の成長を促す。
スマートホームデバイス向けには現在、AmazonのAlexa Smart Home、AppleのHomeKit、GoogleのWeaveといったフレームワークがあり、AmazonのAlexa、AppleのSiri、GoogleのGoogle Assistantといったデジタルアシスタントによる制御をサポートしている。
消費者としては、"スマート"ホームデバイスなのだから、自分がどのようなスマートフォンやスマートスピーカーを使っていても自分が使用してるデジタルアシスタントに操作を頼めて当然と期待する。Philips HueやIKEAのTRÅDFRIシリーズのように、それを実現している製品もある。だが、それはメーカーの努力の結果であり、Amazon、Apple、Googleの3つに対してだけでも、スマートホームデバイス製品のあるべきシンプルさを維持しながら全てをサポートしている製品は少ない。自分が利用しているデジタルアシスタントに対応する製品を消費者が探し、スマートホームを機能させる互換性を持たせた製品作りにメーカーが苦戦しているのが現状だ。
Project Connected Home over IPは、インターネットの基盤技術であるインターネットプロトコル (IP)を用いて、スマートホームデバイス、モバイルアプリケーション、クラウドサービスをまたがった通信を可能にし、またデバイス認証のための特定セットのIPベースのネットワーキング技術を定義することを目指す。最初の仕様では、802.11ax (Wi-Fi 6)を含むWi-Fi、2.4GHz帯 802.15.4-2006のThread、Bluetooth Low Energy (4.1、4.2、5.0)を採用する計画で、さらにEthernetやセルラーなどへの拡大を視野に入れている。
新たな共通の通信プロトコルの開発および実装には、幅広い採用を促すためにオープンソースの手法を採用し、利用を希望する企業が無償で利用できるようにする。また、新プロトコルの開発に必要な時間を短縮するために、ワーキンググループ参加企業がこれまで個別に実用化してきたスマートホーム技術の知見も利用する方針だ。2020年後半の仕様ドラフト版のリリースを目指す。
無線通信規格の策定を担う業界団体Zigbee Allianceには以下のような企業がボードメンバーとして参加しており、それらもワーキンググループに参加してプロジェクトに貢献する。
CNBCによると、Project Connected Home over IPは、まず火災警報器、一酸化炭素センサー、スマートロック、セキュリティシステム、スマートプラグ、温度調節器といったすでに市販を通じて安全が検証されたデバイスにフォーカスし、その後デバイスの種類や商業向けソリューションを拡大する。
IDCによると、2019年のスマートホームデバイスの世界市場は前年比23.5%増の8億1500万台の出荷が見込まれ、その後も二桁の成長が続き、2023年には世界全体で13億9000万台以上になると予測する。これからの成長が見込まれるのはビデオエンターテイメントデバイス、そしてカメラ、ドアロック、ドアベルなど家庭用監視装置/セキュリティデバイス。スマートホームデバイスの最初の成長を牽引してきたスマートスピーカーはテレビや温度調節器などへの統合が進み、単体デバイスの成長は減速していく。
そうしたスマートホームデバイスのこれからの成長を後押しするのは「サービス」であり、デバイスの役割はサービスを届ける手段になる。そのためにもデバイスをよりシンプルかつ便利に、そして安全に使用できる設計と信頼性が欠かせない。規格の乱立による混乱を危ぶむ声も上がっていたが、Amazon、Apple、Googleの3社は、デバイスの差別化やデジタルアシスタントでの競争とは別に、スマートホームデバイスに関しては消費者がコネクテッドホームに期待する利便性の実現を優先した。