Amazonデバイスのラインナップに新たに加わった8型タブレット「Fire HD 8」と「Fire HD 8 Plus」。5月の発表時に大きな注目を集め、現在は解消されているものの、一時は入荷待ちになるほどの人気ぶりが続いたことも記憶に新しい。「この価格は安すぎ」「採算度外視では?」などと評判のAmazonタブレットの新機種を、AV(オーディオ・ビジュアル)機能を中心に遊び倒してみた。
2020年版となる第10世代は、主な進化点として、2018年版(第8世代)と比べてパフォーマンスやストレージ容量が増強され、バッテリ持続時間は12時間に向上(第8世代は10時間)。新たにUSB 2.0 Type-Cポートを搭載し、Type-C経由での充電に対応している(従来はmicroUSB)。各種通知に邪魔されずに、ゲームプレイに集中できる「ゲームモード」を備えているのも注目ポイントだ。
細かいところでは、microSDカードスロットは最大1TBまでのmicroSDカードが使えるようになった(従来は400GBまで)。IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠でデュアルバンド対応の無線LAN機能を備え、アンテナは2基内蔵。Wi-Fi 6(802.11ax)には、執筆時点では対応していないが、通信速度の出る環境なら802.11acでも不満はない。
上位機のFire HD 8 Plusは3GBメモリを備え、ワイヤレス充電の「Qi」に対応している点が、手ごろなFire HD 8(2GBメモリ、ワイヤレス充電非対応)との大きな違いだ。一方で、本体サイズ/重さは202×137×9.7mm(縦×横×厚さ)/355gと共通。
どちらを選ぶかの決め手は、価格やメモリの搭載量、Qi充電の有無、カラーリングとなる(Fire HD 8 Plusはスレートのみ、Fire HD 8はブラック、ブルー、ホワイトの3色)。なお、付属のUSB充電器についても、通常のFire HD 8が5W出力、Plusは9W出力という違いがある。
単体で同じストレージ容量同士を比べてみると、2つの製品には2,000円の差があるわけだが(値引きなどがない通常価格の場合)、個人的にはこの差額を払ってでも上位のFire HD 8 Plusを買うほうが後々幸せになれると思う。ワイヤレス充電も余裕のあるメモリもタブレットの使い勝手を快適にする大事な要素で、しかも後から増強することはできないからだ。
コンパクトで持ちやすく好評だったという、8型画面のスペック(800×1,280ドット、189ppi)は第8世代からそのまま継承。電子書籍を読むときは、文字中心の小説ではくっきり読めるが、漫画や写真が多いコンテンツではさほど解像感は高くない。とはいえ、パフォーマンス面が従来よりも強化されたおかげか、すばやくページをめくり続けたときや、作品の一覧リストをスクロールしていくときのサムネイル表示などのレスポンスはなめらかで、気持ちよく読み進められる。画面周りのベゼルが太いおかげで、本体を持っても画面のフチを誤打するミスが起きにくいのも良いところだ。
動画再生も試してみた。ピクチャー・イン・ピクチャー(PIP)機能に対応しているので、ネット動画を小画面で観ながら、Webサイトを閲覧したりメールを確認したりするといった使い方ができて便利。画質については正面や斜めから見てもキレイで、ノイズもなく見やすい。それ以上に驚いたのが、動画を観るときの内蔵スピーカーの「音の広がり感」だ。
Amazon Prime Video「ジュラシック・パーク(吹替版)」やNetflixのオリジナルアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」などを見ると、音の広がりが思ったより良く感じられ、何度か鑑賞して知っている作品なのについ引き込まれて見入ってしまった。Dolby Atmosオーディオ対応のデュアルステレオスピーカーを搭載しているところは前世代と同じはずだが、前世代とくらべてみると、たとえば恐竜の群れが草原を駆け抜けていくときのガサガサした足音はこちらに迫ってくるかのよう。SAC_2045 第2話のトグサ(CV:山寺宏一)の落ち着いたセリフにも“その場で聞いている”ような実在感があった。
Dolby Atmosなどの音声処理がFireタブレットの中でどのように行われているかは分からない(画面にもその類いのアイコンは出ない)が、ひとつ分かるのは本体の樹脂が従来のFire HD 8と違い、音量を上げてもビビらないこと。これが、新しいFire HD 8の音に良い影響を与えているのかもしれない。いずれにしろ、映像配信サービスを使うときは内蔵スピーカーで音声を流したほうが楽しめそうだ。もちろん、3.5mmステレオミニジャックを引き続き搭載しているので、深夜など周囲に配慮してイヤホンやヘッドホンを使うこともできる。