「陽性=感染、陰性=非感染」はミスリード…抗原検査キットで得られる"安心"の真実 普通の人では結果を活用できない

9月27日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は事務連絡「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて」(以下、事務連絡)を発出し、薬機法の承認を得ている医療用抗原検査キットを「特例的に」薬局で販売することを認めた。

この薬局販売制度の1つ目の問題点は、検査の対象がよくわからないことだ。

9月27日の事務連絡によると、「症状がある場合は医療機関を受診」することとなっており、有症状者はこの検査キットを使う対象から外されている。その一方で、「無症状者には推奨されない」ともあり、無症状者も対象ではないという。有症状・無症状以外の類型は、普通の日本語では空集合である。

「陽性=感染、陰性=非感染」はミスリード…抗原検査キットで得られる

政府がまとめている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針 第4.1版」においても、種々の検査をどのような対象者に対して使うのかについて、有症状・無症状以外のカテゴリーは設けられていない。事務連絡は「体調が気になる場合等」の「セルフチェック」を用途として示しているが、「体調が気になる」という状態が、有症状あるいは無症状の状態とどう違うのかわからない。

実際の場面を想像すると、キットの購入者は症状があっても何らかの理由で医療機関を受診したくない場合や、無症状ではあるが「イベントに参加する前」や「人混みに入ってしまった後」などの場合の“安心”のためにこの検査を使用することが多くなるだろう。

事務連絡が、検査の対象者を曖昧な書きぶりにした以上、文面で“有症状者も無症状者も対象ではない”と言ったとしても、実質的には“自分で判断してね”ということになりはしまいか。

次に、抗原検査キットの検査に用いる鼻腔検体の問題がある。このキットは、鼻咽頭ではなく鼻腔ぬぐいの検体を用いることとなっているが、そもそも医療機関の中であれば鼻腔検体を用いた抗原定性検査は(普通)行われない。

前出の病原体検査の指針によると、そもそも無症状者に対しては、鼻腔、唾液、鼻咽頭いずれの検体であっても抗原定性検査は認められていない。さらに、抗原定性検査よりも検査精度が優れるPCR検査や抗原定量検査であっても、無症状者に対しては鼻咽頭と唾液のみが認められており、鼻腔検体は認められていない。

実際の使用場面のほとんどが無症状者であると想定される中で、医療機関で、医療者によって行われる、PCR検査や抗原定量検査、でさえも認められていない鼻腔検体が、家庭で、非医療者たる一般国民によって行われる、抗原定性検査という劣位の検査、で認められることを合理的に説明できない。