lifehacker lifehacker LifeHacker LifeHacker ダイエットを台無しにせずに、上手にお酒を飲む方法

ダイエット中のアルコール摂取は「ヘルシー」ではないという理由で通常は避けられがちですが、それまでの努力を台無しにせずに1杯か2杯のお酒を飲む方法もあります。

まず最初に、このテーマに触れる理由を説明しておきましょう。基本的に、お酒を飲むと脂肪が減りにくくなり、余分なカロリーが増えます。その点を考えれば、完全にやめてしまうほうが良いように思えます。

本当にそうできるのなら、すばらしいことでしょう。生理学的な理由から、アルコールはダイエットの努力を台無しにしてしまいますから。

とはいえ、減量は体の仕組みだけが関係しているわけではありません。もしそうなら、「食べる量を減らして、運動を増やす」だけで、誰もがスキニージーンズをはけるようになるはずです。でも現実には、あなたをとりまく環境も、あなたの体の仕組みと同じぐらい、減量に大きな影響をおよぼしているのです。

そして、アルコールときたら、これ以上ないぐらいうまく人々の生活に溶けこんでいます。アルコールは新石器時代以降、ほぼあらゆる文化で中心的な役割を担ってきました。人類の進化において重要な役割を果たしたという証拠まであります。

アルコールや炭水化物のように、環境や習慣に深く入りこんでいるものを排除しようとすると、かえって墓穴を掘る結果になってしまうこともめずらしくありません。ですから、排除するよりも、時々の「ご褒美」として減量プログラムに賢く組みこむほうが良いかもしれません*。

*このルールは、アルコール依存症の人などには当てはまりません。この点については、2番目のセクションで説明します。

研究からわかっていること

アルコールの摂取は、絶対的に悪いというわけではありません。それどころか、少量や適量であれば、数多くの健康上のメリットを得られるのです。フィットネス関連の著述家で栄養士でもあるMartin Berkhan氏は、次のように説明しています。

適度なアルコール摂取には、インスリン(血糖を抑制するホルモン)感受性の向上、トリグリセリド(中性脂肪)濃度の低下、血糖コントロールの改善といった効果があります。そうした効果は、健康な人だけでなく、2型糖尿病の患者にも見られます。

アルコールがインスリン感受性を向上させるメカニズムについては、まだ決定的な統一見解はありませんが、有望な説明として挙げられるのは、アルコールが骨格筋中のAMP活性化プロテインキナーゼ(細胞内のエネルギーセンサーとなる酵素)を刺激し、体重減少を促進するという説です。この効果により、長期的な栄養素配分に好影響が出ると推測しても、けっして拡大解釈ではないでしょう。

「アルコール摂取がインスリン感受性に影響を与える」と言われてもさほど魅力を感じない人に向けて、もうひとつ別の事実を紹介しましょう。さまざまな研究で常に、「お酒を飲まない人よりも、ほどほどに飲む人のほうが長生きする」という結果が出ているのです。これは主に、心疾患のリスクの低下によるものと考えられます。

ですが、アルコールはそれ以外にも、西洋医学上のさまざまな疾患を予防し、病気にかかりにくい健康な人生をつくるのに貢献しているのです。たとえば、アルツハイマー病、メタボリックシンドローム、リウマチ性関節炎、風邪、各種のがん、うつ病...等々、挙げていけばきりがありません。

とはいっても、アルコールが生理学的に脂肪の減少を邪魔するのは事実なので、やはりダイエットの妨げになるのでは? 米ライフハッカーに健康関連の話題でたびたび寄稿している栄養士のAlan Aragon氏によれば、その点については、まだ意外なほどわからないことが多く、研究でも結論が出ていないのだそうです。

ある研究では、エタノールを1日平均56グラム(ビール4杯ぶん)摂取する男性のグループのほうが、お酒を飲まない対照グループよりも、総摂取カロリーが16%多くなりました。この2つのグループ(お酒を飲む人と飲まない人)の身体活動量は同じでした。

したがって、論理的に考えれば、お酒を飲むグループの人たちのほうが、体重が何キロか重くなっているはずです。ところが、そうではなかったのです。飲酒グループのほうが多くのカロリーを摂っていたにもかかわらず、どちらのグループでも、肥満度指数(BMI)は同じでした。

この研究だけ、たまたまそんな結果になったわけではありません。Aragon氏はさらに、こう説明しています。

別の研究では、2種類の食事方法による減量を比較しました(いずれも1日あたり1500キロカロリーを摂取)。一方のグループの被験者は、総カロリーの10%(150キロカロリー)を白ワインで摂取しました。これは1日あたり、大体グラス1杯にあたります。別のグループは、カロリーの10%をグレープジュースで摂取しました。

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3カ月後に総体重を調べたところ、白ワインのグループのほうが(グレープジュースのグループよりも)1キロ近く多く減っていたのです。ただし、この差は、統計的に有意なものではありませんでした。

つまり、ウエストラインを絞りたい場合、アルコールはいわば不確定要素だというわけです。影響を受ける人もいますが、受けない人もいます。「お酒を飲むと、すぐウエストが太くなってしまう」という人の場合、悪いのはアルコールそのものではなく、「アルコールによる判断力の低下」なのかもしれません。『The American Journal of Clinical Nutrition』に掲載された2013年の研究では、適量のお酒を飲んでいる時には、被験者の摂取するカロリーと飽和脂肪の量が増えました。

こと減量に関しては、最終的に重要なのは、結局のところカロリーです。体重が増える原因は、アルコールそのものではなく、お酒と一緒に夜遅くに食べることの多い、ハンバーガーやフライドポテトです。

その点を押さえておけば、ダイエット中にも時々お酒を楽しむ計画を立てられます。そうすれば、ダイエットに生活を振りまわされるのではなく、普通の生活のなかでうまく食事をコントロールしている実感が得られるはずです。

自分に合ったお酒とのつきあい方を見極める

先ほど、完全にアルコールを断つよりも、ほどほどに飲むほうが良いかもしれない、と書きました。それには、2つの例外があります。

1つ目は、アルコールを断つのをまったく苦にしない場合です。飲む必要がないなら、完全にやめてしまっても問題ありません。家族や友人になんと言われようとアルコールをやめられるのなら、それはすばらしいことです。

2つ目の例外は、アルコール依存症(自称ではなく、実際に診断がつくレベルの人)の場合です。アルコールは他の食べものとは違って、「適量の摂取を心がける」のがきわめて難しいのです。アルコール依存症の治療に現場で携わっている精神科医のTodd Ivan氏は、次のように説明しています。

現在、アルコール依存症患者(およびその他の物質の依存症患者)の一般的な治療法は、断酒を促し、セラピーや瞑想によって治療をするというものです。完全な禁酒を強制されない「節酒」という方法を望む患者もいます。ですが残念ながら、アルコールは他の食べものと違って、いったん抑制から逆戻りしてしまうと、きわめて深刻な状況につながるケースが多いのです。

要するに、期間限定で販売されているデザートに、つい手を出してしまっても誰も死んだりはしないでしょうが、アルコールに溺れると、飲酒運転で誰かを殺してしまうおそれがあるということです。

飲酒に関して深刻な問題を抱えているという自覚のある方には、専門家に相談したうえで、完全に断酒することをお勧めします。それ以外の方は、これから説明するルールに従って、賢くお酒を楽しみましょう。

ステップ1:自分のダイエット計画を把握する

まずするべきなのは、何をどれくらい食べるかを決めることです。それには2つの方法があります。カロリー計算に馴染みがない方のために、食事制限と運動をめぐる記事の結論部分を改めてご紹介します。

ダイエット上級者なら、タンパク質、脂肪、炭水化物の1日の摂取量を決めると良いかもしれません。この3つは、健康マニアのあいだでは「三大栄養素(マクロ)」として知られています。

ステップ2:お酒を飲みそうな日を見極める

1週間のなかで、お酒を飲みそうな日を前もって見極め、それぞれの日が「軽い」飲酒日なのか「無制限の」飲酒日なのかをまず判断しましょう。(「無制限」のほうは、積極的にお勧めするわけではありませんが、一応その場合のお酒の飲み方も書いておきます)。

軽い飲酒日は、数杯だけしか飲まない日を指します。同僚との楽しい飲み会や、ディナーでワイン1本をあける場合などを想定してください。

軽い飲酒日には、基本的にはいつもの食事のルールを守ります。ただし、1つだけ違う点があります。アルコール飲料を1杯飲むたびに、お酒にふくまれている実際の炭水化物の量の他に、脂肪10グラムを摂取したものとして計算してください。

たとえば、赤ワイン1杯の場合は、脂肪10グラム、炭水化物3グラムを摂ったものとして計算します。ウイスキー1杯なら、脂肪10グラムです(炭水化物はふくまれていません)。

無制限の飲酒日にあたるのは、パーティーや結婚式などの大きなイベントのケースです。「ひいきのチームが日本シリーズで優勝した日」なども該当するでしょう。無制限の飲酒日には、Berkhan氏が推奨している以下のルールに従って行動しましょう。

無制限の飲酒日には、とにかくカロリーを減らそうとするのではなく、1日のダメージをできるだけ小さくすることを意識してみてください。Berkhan氏のルールに従い、脂肪を控えてタンパク質を多く摂るようにすれば、カロリーオーバーになった場合でも、脂肪を蓄えてしまう可能性は小さくなるはずです。

この記事は、なにも大酒飲みになれと言っているわけではありません。確かにこの記事で触れた知識が、飲酒の正当化に利用される可能性はあります(もちろん、それはダメですよ)。それでもこの記事を書いたのは、ここで紹介したスキルが、とても重要になる場合もあるからです。というのも、その日1日のダイエットの成否は、多くの場合、あなた自身が「うまくいった」と信じるかどうかによって決まってしまいます。

これこそが減量の厄介な点なのですが、ビールを1杯飲んだというだけの理由で、「ダイエットが台無しになった」と思ってしまったら、それをきっかけに、本当にダイエットを台無しにする行動をとってしまう可能性が高くなるのです。だから、もっと柔軟な方針を採用して、時々の飲酒を「計画の一部」として認めてしまったほうが、きっとダイエットを続けやすくなるはずです。

Dick Talens(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)

Images by Negovura (Shutterstock), Roark (Pixabay), Elvert Barnes, and Loving Earth.