なぜ人間は他の類人猿よりも“ぽっちゃり”しているのか?

他の類人猿に比べて、ヒトは体脂肪が多い

ヒトのDNAは、98パーセント以上がチンパンジーやボノボと同じですが、姿はまったく違います。まず明らかに違うのが、手足や顔かたち、体毛の有無などですよね。

ところでよく見ると、チンパンジーの肉体はよく引き締まっています。そう思うのは、私だけではないはずです。その違いは、筋肉量だけではありません。ヒトと、ヒトに近い大型類人猿とでは、体脂肪の蓄え方にも違いがあります。ヒトにとっては、これは長い目で見ると実はメリットだったのです。

ボノボとヒトを平均で比較する場合、特に上半身においては、ボノボの方がヒトよりもはるかに筋肉量が多く、圧倒的に力が強いです。ところが、ボノボとヒトを同量の筋肉で比較した場合、ボノボの肉体的優位性はそれほど高くはないことが、複数の研究でわかっています。

なぜ人間は他の類人猿よりも“ぽっちゃり”しているのか?

チンパンジーとヒトとで、実際の筋肉繊維の力と働く速度を比較した場合、チンパンジーの筋肉のそれはヒトと比較してもわずかに1.5倍に満たない程度であることがわかりました。つまり、チンパンジーの力がヒトより強いのは確かですが、実際に比較した場合『インクレディブル・ハルク』級の強さを誇るほどではないのです。

チンパンジーがスーパーヒーロー級の強さを持っているわけではないのなら、なぜチンパンジーの肉体はあんなに「仕上がって」見えるのでしょうか? それは実は、ヒトの体脂肪が他の霊長類に比べて多いからです。

ヒトの方が体脂肪が多いのは、ライフスタイルからしてもじゅうぶんに納得できそうですね。ヒトは多様な栄養素を摂取する食文化を持つため、ヒトと他の類人猿との比較は現実には困難です。

動物園の類人猿は野生とはまったく異なるエサを摂取しています。動物園の動物は、必要に応じてきちんと栄養管理されているためです。

ある研究において、人と他の類人猿の体脂肪が比較されました。動物園や研究施設で自然死した13頭のボノボを解剖したところ、飼育下にあるにも関わらず、総体重に対する体脂肪率が非常に低かったのです。

ボノボの平均体脂肪は雌雄ともに、どのジェンダーのヒト成人の平均体脂肪よりも少量でした。ボノボの体脂肪率は、1パーセント以下〜8パーセントをわずかに上回る程度でした。健康なヒトの平均体脂肪率は、14〜30パーセント程度です。

前述したように、これらのボノボは管理栄養下にありました。しかし運動不足であるため、数値はあくまでこれらのボノボの体脂肪のデータであり、すべてのボノボの体脂肪の参考とはなりません。。