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専門家の指導のもと、一定期間の断食を行い、体の中を洗い流すための宿泊施設が「断食道場」。ビジネスマンにも人気が高い健康スポットで、編集部員が体験した。「プレジデント」(2022年4月1日号)の特集「食と体調の新常識」より、記事の一部をお届けします――。【図表】断食後、体に起きること■不健康の自覚なき29歳、体年齢は44歳だった!「私が断食道場を始めた25年前の利用者は、過食症やガンを患っている人、メンタルに不調をきたしている人など、病気を抱えている方がほとんどでした。しかし、現在その割合は全体の1~2割ほどです。病気の予防であったり、忙しい毎日をリセットするためであったりと、裾野がかなり広がりました」 やすらぎの里・代表の大沢剛氏が言う。かくいう私(29歳・男性)も、大きな体の不調を抱えているわけではない。強いて言えば、慢性的な背中の痛み、階段を上った際の息切れ、眠る際の息苦しさがあるくらいだ。そういえば、体重も10年前に比べると15キロほど増えている。 とはいえ、不健康であるという自覚はさほどない。ところが、体重や体脂肪率を計測した結果、何と、私の体年齢は44歳だった。息切れや息苦しさを感じるのも無理はない。大沢氏によれば、背中の痛みは連日のデスクワークで「交感神経優位」の時間が長く続いているせいだという。戦闘モードに入っているとき、人間は無意識に背中を丸めた前傾姿勢になるからだ。そして、交感神経が過度に優位になると代謝が悪くなり、太りやすくなる。
■3泊4日の断食生活が始まった 大沢氏にも「私のところに来る理由付けとしては充分すぎるほどお疲れのようですね」と気の毒がられてしまった。自分では気が付いていないだけで、体は悲鳴をあげていたようだ。 「人間は体調を崩すと栄養のあるものをたくさん食べようとします。しかし動物はどうですか。何も食べずにうずくまり、ひたすら眠り、消化活動をストップさせる。それが自然のサイクルなんです」 大沢氏との面談が終わり、3泊4日の断食生活が始まった。まず大きな効果を感じたのは初日の夕方に行ったヨガだ。前日の夕食後から何も食べていないので、すでに体がいつもより軽い。その状態で30分ほどポーズを取りながら呼吸を整えると、背中の痛みがスッとどこかに消えていったのである。夕食は具なしの味噌汁をすすっただけだが、不思議と空腹は感じない。ヨガのリラックス感がまだ残っており、21時には眠ってしまった。 2日目の朝はトレイルウォークから始まった。私が宿泊しているやすらぎの里・養生館は海岸沿いの崖に位置する。横目に海を眺めながらほかの宿泊客とともに山道を50分かけて歩く。細身の体で岩の上を軽快に進んでいく40代の男性は、年に2回のペースで断食道場に訪れるという。 「経営者の知り合いからの勧めで5年前から、やすらぎの里に来るようになりました。彼は会社をいくつも経営したり、ときには売却したりと、僕からしてみれば鋼のメンタルの持ち主といった印象でした。でも、そうやって常に頭を使っている人ほどメンタルの調整には気を使っているんですよね」 そう話す男性も、医療関係のサービスを提供する会社を経営している。やはり日々頭を使ってばかりという自覚があり、「脳のデトックス」を目的に断食道場へ足を運ぶのだという。今回は1週間のコースだ。 「僕はロジックではなく感覚で仕事を進めるタイプなんです。数字で分析もするけれど、それよりはこのサービスを利用した人が何を感じるかを想像する。そして、その感覚を大事にする。だから、こうやって時々脳をデトックスしておかないことには、自分の本来の力が発揮できないんです」
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最終更新:プレジデントオンライン