エスイーエー 加藤善一 社長
日本は、2030年までに家庭内の設備や家電をコントロールして消費エネルギーの最適化を行う住宅、「スマートハウス」の全世帯普及を目指すとしている。しかし初期費用は安くなく、工務店も消極的だ。だが工務店向けの経営コンサルを行うエスイーエー(新潟県上越市)の加藤善一社長は、工務店こそスマートハウスに取り組むべきと将来性を説く。
【聞き手/報道部長 福田善紀】
FIP制度が普及の材料に
――なぜ、御社はスマートハウスの普及に力を入れるのですか。
スマートハウスでは昼間は太陽光、夜間はEV車で蓄電した電力を使うなど、電力会社から電気を買わずに住宅一戸でエネルギーの自給自足が可能です。しかも余った電力は売電できますから、スマートハウスは負債ではなくエネルギーを生み出す資産です。しかし国内普及率は低いのが現状です。工務店には、ぜひこのエネルギーリフォームに取り組んでいただきたいと考えています。
――スマートハウスの設備には、何が必要でしょうか。
まず、家庭での使用電力を管理するHEMSとスマート分電盤が必要です。これらの簡単な連携で、電気の需要と供給を自動で判断します。例えば晴れた朝なら太陽光で、雨ならEV車からの電気で朝食の支度をしたり、雨の日はAIが電気料金の一番安い時間帯にエコキュートの湯増しをしたりします。また好天で昼間に余った電気は蓄電池に充電するなど、節電しながら効率的に発電と蓄電を行えます。
――しかし、スマートハウスには太陽光パネルやエコキュート、EV車にためた電気を住宅へ供給するV2H機器など、リフォーム代と車代が必要です。
安く見積もった場合だと、太陽光パネルをはじめとしてEV車やV2H機器、工事費まで入れて500万円ほどでしょうか。お客様の負担は月数万円程度の支払いで済みます。
――お客様にとって、元は取れますか。
夫婦共働きの4人家族を一例にして計算します。1日の発電量44.7キロワットとすると、そこから自家消費電力5キロワットなど差し引いて、残った電力25.7キロワットを売電する。すると1カ月あたり約1万3000円になります。そこに、従来かかっていた電気料金や浮いたガソリン価格を足すと、1カ月当たりの経済効果は約5万円にもなります。
――すると1年間で60万円、10年で600万円ですね。
10年で元が取れる計算です。さらに今年4月からスタートのFIP制度が、スマートハウス普及の材料になるでしょう。2012年スタートの固定価格買取制度(FIT制度)では、あらかじめ昨年は1キロワットあたり19円、今年は17円で買い取ると決定していますが、その価格は下がる一方でした。それに対しFIP制度は、市場価格に一定の補助額を上乗せして電気を取り引する制度です。電気卸市場で自由に売電される価格に連動するので、例えば市場価格が50円なら来年は60円で売電という風に変動します。スマートハウスで蓄えた電気を、市場の卸価格の高い時に売電できるようになるので、経済効果の好転も見込めます。
――政策の後押しが大きいですね。
日本は原発が停止した3・11以降、電気料金が上がり続けて、現在は当時の2倍です。脱炭素化が進めば、さらに値上げが進むでしょう。また2035年から、日本でも新車販売はEV車のみとなり、各メーカーとも100万~200万円台という低価格で販売予定です。EV車の増加と共に、EV車でためた電気を住宅に供給するシステム「V2H」機器も普及するでしょう。家庭用電源からEV車に充電するだけでなく、EV車に蓄えた電力を家庭用電力として最大6キロワットも給電できるからです。つまり、それだけあれば停電時にEV車をバックアップ用電源に利用できます。さらに雨に濡れながらの充電は不可能ですから、V2Hの盗難防止も含めて、工務店はシャッター付きのソーラーカーポートをお勧めできます。エクステリア商材の販売促進が期待できるわけです。
――スマートハウスは初期費用がかかりますが、お客様はそれだけリターンも見込め、工務店も将来性がかなり大きいようです。
住む人が「建てて良かった」と思える、未来永劫の価値を提供していると自負できるのがスマートハウスです。さらに普及が進めば、やがて住宅同士がつながり合い、地域で一つの発電所のように「エネルギーの地産地消」も可能になるでしょう。
独自に開発したネット・ゼロ・エネルギー・ハウス