今こそ人間ドックへ! 費用対効果の高い「お勧め検査」7選

病気の早期発見・早期治療のために欠かせない、健康診断やがん検診。こうした健診・検診で行われる検査を一度に受けられる機会が「人間ドック」だ。しかし、長引くコロナ禍において人間ドックの受診者は減少し、それに呼応するように早期がんの発見件数が減ってきている。リモートワークによる運動不足や食生活の乱れで、気づかないうちに糖尿病や危険な脂肪肝が進行する例も増えている。第6波がピークを越えつつあるこの春こそ、先延ばしにしていた人間ドックの予約を入れてはどうだろうか。本特集では、自らの健康チェックと病気の早期発見のために欠かせない人間ドックの効果的な受け方を、年齢別、リスク別に解説していく。

『最新版・人間ドックの上手な受け方』 特集の内容

健康長寿を実現するためには、自分の体の健康にどんなリスクがあるのかを知り、病気が「芽」を出さないよう生活を改善することが大切だ。そして、病気を発症してしまったなら、できるだけ早く発見し、適切な治療を受けられるかどうかがその後の人生を大きく左右する。

そこで重要な役割を果たしてきたのが、企業が行う健康診断や、自治体が行うがん検診などの各種検診、そして、基本的な検査から最新の検査まで、さまざまな検査を一度に受けることができる人間ドックだ。

ワンポイント解説

「健診と検診の違いは?」

健診(健康診断)は「病気でないことを前提に、将来の病気のリスク、危険因子を発見し予防につなげるために実施」(1次予防)するもの。それに対して検診は「特定の病気の早期発見・早期治療につなげるために実施」(2次予防)するもの。

今こそ人間ドックへ! 費用対効果の高い「お勧め検査」7選

ところが今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、がん検診、人間ドックの両方に大きな影響を与えている。感染を恐れ、受診を手控える人が増えているのだ。

人間ドックを手掛ける、日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニックの畑啓介院長はこう話す。「私たちの関連施設では人間ドックを過去15年間行ってきていますが、2020年の人間ドックの受診者数は、2019年と比較し減少が見られました」。こうした健診・検診控えが、今、少しずつ私たちの健康に影を落とし始めている。

特に深刻なのは、命を守るために大切ながん検診の受診が控えられ、がんの発見が減っていることだ。公益財団法人日本対がん協会は、2021年の7月から8月にかけて、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院、大学病院など486施設に、5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)の診断数、そのステージ(進行期)、手術数などのアンケートを行った。

回答のあった105施設のデータを解析すると、2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年の8万8814件よりも9.2%減少していることが分かった。5つのがんそれぞれの診断数の変化は図1の通りだ。

図1 2019年と2020年のがん診断数の比較コロナ前の2019年に比べ、2020年には5つのがんすべての診断件数が減少していた。(出典:日本対がん協会「2020年のがん診断件数」2021年11月)

国立がん研究センターが発表した「院内がん登録 2020年全国集計」でも、国内でがんと診断された患者が2020年に初めて減少した。「実際にがんに罹患する人の割合は、2019年と変わらないと考えられるため、これらの数字は、見つからずにいるがん患者が増えていることを示唆しています」(畑院長)。単純計算で、コロナ前に発見できたがん患者が10人いたとしたら、コロナ以降は9人に減っていることになるのだ。

がんのステージ別に見ると、検診機会の減少の影響は、特に早期がんの発見に色濃く表れている。胃がんの診断件数のデータを進行期(1~4期)ごとに分けてグラフ化したものが図2だ。2020年は1期の診断件数の減少が17.4%と特に大きい。胃がんは近年、早期発見の推進やピロリ菌感染率の低下によって10年生存率が大きく高まっているがんの一つだ。それだけに、早期がんの発見が減っていることは由々しき事態といえる。

図2 進行期別がん診断数の比較<胃がん>検診で見つかることの多い1期の胃がんの診断件数が、2020年には17.4%も減少していた。(出典:日本対がん協会「2020年のがん診断件数」2021年11月)

畑院長は「深刻なのはがんだけではありません」と指摘する。「リモートワークによる運動不足や不規則な飲食により、知らず知らずのうちに内臓脂肪が蓄積している人が増えているように見受けられます。今年の当院の人間ドックでは、気づかないうちに糖尿病を発症したり、危険な脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎:NASH)が進行している患者が多く見つかっています」(畑院長)

こうした事態を防ぐためにも、コロナの第6波のピークを越えつつある今こそ、がん検診や人間ドックの受診を検討したい。特に人間ドックは、自治体のがん検診ではカバーしていない優れた検査も受けることができ、一度に全身の病気をチェックすることができるため、定期的に受けておきたい健診だ。

この特集では、どうしたら効果的かつ費用対効果のよい人間ドックが受けられるのか、年齢やリスク別に特に受けておきたいオプション検査などについて、畑院長に詳しく指南していただこう。