インターネットに接続していて、遅いなあと感じることってたびたびありますよね。
たいていの場合、契約している回線が遅かったり、みんなが接続している時間帯で回線が混雑していたりすることが原因です。でも、もしDNSが遅くてインターネットが遅くなっているとしたら? その設定を変更することで、インターネットの速度が速くなるかもしれません。
そもそも、DNSって何?
インターネットを通してコンピュータ同士で通信するときには、IPアドレスとよばれる郵便番号のようなものを使って相手を特定します。しかし、IPアドレスはただの数字の羅列なので、どのWebサイトがどのIPアドレスだったか覚えようするととても大変です。そこで、人間でも覚えやすいドメイン名(たとえば、www.gizmodo.jp)とIPアドレスをひもづけることで、ドメイン名を知っていれば相手のコンピュータと通信できる、DNS(ドメイン・ネーム・システム)というシステムが考案されました。
パソコンでもスマートフォンでも、WebサイトやWebサービスにアクセスするときはDNSを使っています。ブラウザでWebサイトにアクセスするとき、まずURLに含まれるドメイン名をDNSサーバーに問い合わせに行きます。DNSサーバーからIPアドレスを教えてもらったら、そのIPアドレスを持つコンピュータと通信してWebサイトのデータをダウンロードします。こうして、はじめてWebサイトを表示することができます。
もちろん、IPアドレスがわかっていればDNSの処理は必要ありません。でも、数えきれないほどWebサイトがあることを考えると、個人でIPアドレスを覚えておくのはとうてい不可能ですよね。このように、普段意識することはありませんが、DNSが快適なインターネット環境を支えてくれています。
DNSの設定を変更する理由って?
そもそも、DNSの設定について意識したことがない方もいるかもしれません。たいていは、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)が提供しているDNSサーバーが自動で設定されるので、考える必要もありませんし。ただ、インターネットを使うときに、プライバシーやスピード、セキュリティ、信頼性といった点が気になる場合は、DNSの設定を見直す必要があります。
プライバシーの観点でいうと、DNSサーバーを変えることで、完全ではないものの自分のアクセス記録を守ることができることができます。たとえば、CloudflareのようなDNSプロバイダーは、ユーザーのプライバシーを守るために、24時間ごとにDNSサーバーへの問い合わせ記録を削除するよう設定しています。また、フィッシングサイトや悪意あるサイトへのアクセスをブロックするといったサービスも提供しています。もちろん、ISP自らこのようなサービスを提供していることもあります。
しかし、ユーザーがどのWebサイトにアクセスしているのかといった情報は、DNS以外の方法で追跡されている可能性があります。また、DNSサーバーをISPから別のプロバイダーに切り替えても、そのプロバイダーが信頼できるかどうかは別の問題です。本当に自分のアクセス記録を守りたい場合は、VPNや暗号化されたDNSの使用を考えましょう。
スピードや信頼性の観点でいうと、DNSサーバーの変更によって大きく向上する場合があります。DNSサーバーの応答が速く、安定してれば、それだけWebサイトへのアクセスも速く、安定したものになります。ただ、DNSサーバーの応答速度や安定性は、契約しているISPや物理的な距離に依存している部分があるので、必ずしも向上するわけではありません。トライアンドエラーで、DNSサーバーとの相性を確認する必要があります 。
他に、設定の柔軟性という観点でいうと、あくまでDNSレベルの話になりますが、ISPや政府によってブロックされているWebサイトにアクセスできたり、逆にアダルトサイトなどアクセスさせたくないWebサイトをブロックするといったことが可能です。もし、自分好みのアクセス制限を作りたい場合は、そういった設定が可能なDNSプロバイダーに切り替えることを検討してみてもいいかもしれません 。
もし、公衆無線LANに接続している場合は、DNSサーバーの設定について気をつけた方がいいでしょう。悪意あるDNSサーバーへ問い合わせるよう設定されていて、フィッシングサイトなどに誘導される可能性があります。こうした危険を避けるために、DNSサーバーを信頼できるものに切り替えるなど、公衆Wi-Fiに接続するときは十分注意しましょう。
DNSプロバイダーの選択肢
DNSサーバーを変更するメリットについて確認してきましたが、どのDNSプロバイダーがいいのでしょうか。ここでは、人気のある4つのDNSプロバイダーについて紹介したいと思います。
Cloudflare
Cloudflareは新興のDNSプロバイダーで、速くてプライバシーに配慮している点が売りです。DNSサーバーのIPアドレスはとても覚えやすく、1.1.1.1と1.0.0.1(プライマリとセカンダリ)になっています。DNSサーバーのレスポンス速度を計測したテストでも、圧倒的な速度を記録しています。
グーグルのパブリックDNSも覚えやすいIPアドレスで、8.8.8.8と8.8.4.4になっています。Cloudflare同様、スピードとセキュリティが売りで、さらにグーグルならではの信頼感があります。匿名化されたものを保存しておくものの、IPアドレスのログは48時間以内に削除される設定です。
Quad9
Quad9のメリットは、スピードと、IBMなどパートナー企業から提供された脅威インテリジェンスデータベースを使った安全性にあります。Quad9のスタンスとして、ユーザーのプライバシーとセキュリティにかなり配慮していて、ユーザーの個人情報を保存せず、その他の利用も許さないよう設計されています。DNSサーバーのIPアドレスは、9.9.9.9と149.112.112.112です。
OpenDNS
OpenDNSは、フィルタリングと子どもの安全性にフォーカスしているDNSプロバイダーです。また、中小企業向けに有償パッケージも提供しています。DNSプロバイダーの中でも老舗であり、2015年にCisco社に買収されています。無償の家族向けパッケージのDNSサーバーとして、208.67.222.222と208.67.220.220が提供されています。アカウントを作成することで、無償のものを含むその他のパッケージを使うことができます。
DNSサーバーを変更する方法
DNSサーバーの設定を変更することはそれほど難しくはありません。無線LANルーターの場合、変更方法は機種によってさまざまですが、たいていはブラウザでルーターの設定画面にアクセスすることで、DNSサーバーを変更することができます。無線LANルーターでDNSの設定を変更すれば、接続しているデバイスについてひとつひとつ設定を変更する必要がありません。
Windowsの場合
スタートメニューから設定アイコンを選択し、ネットワークとインターネットを開きます。アダプターのオプションを変更するを選択し、変更対象となるアダプターを右クリックし、プロパティを選択します。一覧のインターネットプロトコルバージョン4を選択後、プロパティをクリックし、次のDNSサーバーのアドレスからDNSサーバーのIPアドレスを設定します 。
macOSの場合
システム環境設定からネットワークをクリックします。変更対象となる接続を選択し、詳細ボタンからDNSタブを開きます。プラスボタンを使って、新しいDNSサーバーの設定を追加します。
Androidの場合
DNSサーバーの設定を変えるには、すこし手間がかかります。まず、Android端末のIPアドレスを静的に変更しなければなりませんが、これにはIPアドレスの重複が発生しないよう、ルーター側の設定も考える必要があります。もし、IPアドレスの重複が発生しないようであれば、設定からネットワークとインターネットを選択します。Wi-Fiをタップして、接続しているネットワークの設定アイコンを選んで、鉛筆マークを選択(もしくはWi-Fi名を長押ししてネットワークを変更を選択)します。詳細オプションをタップしてIP設定を静的(固定)に変更した後で、DNSサーバーの設定を変更することができます。
iOSの場合
設定からWi-Fiを選択した後、接続しているネットワークをタップします。DNSを構成を選択して、手動をタップした後、DNSサーバーの設定を追加します。
最後に、Wi-Fiではなくキャリアの回線を使っている場合は、DNSサーバーの変更が面倒になります。iOSの場合、アプリの追加なしに変更することはできません。また、Androidの場合は、Android 9 Pieである必要があります。iOSではDNS Overrideというアプリを、AndroidではDNS Changerというアプリを使うことで、キャリアの回線でもDNSサーバーの設定を変えることができます。セルラー回線でどうしてもDNSを変えたいということであれば、これらのアプリを検討してみてはいかがでしょうか。