腸内環境とその健康を保つには? カギとなるのはカロリー摂取量


食が腸内環境を左右することは、当然ご存じのはず。しかしながら、食の適量まで把握しているという人はそう多くないのではないでしょう。

科学系学術誌『ネイチャー(Nature)』に、そのことに関する最新の研究結果が掲載されています。そこではつまるところ、少ないよりは多いに越したことはないということですが…。

16週間の調査方法を解説

ここでご紹介する研究では、「やや肥満~過度の肥満」の範囲に属する成人女性80人を2つのグループに分け、16週間に及ぶ調査が行われました。その間、参加者の半数は医学的に管理された食事プランに沿って1日あたり約800キロカロリーを摂取の上限としました。そして残りのもう半数は、それまでどおりの食生活のまま、減量など行わずに過ごすようにしたということです。

そこで研究期間の前後に、すべての参加者の腸内細菌の検査および解析がなされています。

カロリー制限をすると、有害な細菌の量が増加!?

そうして4カ月が経過しました。そこでカロリー制限を行わなかったほうのグループの腸内細菌を調べたところ、調査開始前の状態と比べ、その数と種類が変わっていないことが確認されました。その一方で、カロリー制限を行ったグループには重大かつ深刻な問題が生じていることが判明したのです。

それはカロリー制限を行った参加者の腸内では、有害な細菌の量が増加しているという数値が出たのです。

腸内環境のバランスが崩れた原因は?

「カロリー制限を行った者たちの腸内に存在する細菌は、そのマイナスな環境下でも生き延びようと多くの糖分子を吸収しようとします。その結果として、腸内環境のバランスが崩れたのでは」というのが、研究者たちの推察です。

腸内環境とその健康を保つには? カギとなるのはカロリー摂取量

その推察を裏づけするように、下痢や大腸炎の原因となる「クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)」と呼ばれる「偏性嫌気性菌(=生育に酸素を必要としない細菌)」の増加が顕著に示されるという結果となりました。この細菌についてアメリカ疾病予防管理センター(米CDC)は、「増加すると根治が難しく、慢性化する可能性が高い」と注意を促しています。

「カロリー不足の食生活を続けていれば、このような状態が生じるのは珍しいことではないでしょう」と述べているのは、栄養士で栄養カウンセラーのクリスティン・ギレスピー博士です。「有益な善玉菌を十分に保つためには、摂取する食物の量が十分であることが重要なカギとなるのです」とも指摘しています。

「私たちが口に運ぶ食物の種類、そしてその量に応じて、腸内細菌の栄養環境にも影響が及ぶのです。つまり、日々の食生活が私たちの腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう=腸内フローラ)のバランスおよび、その健康な状態を維持するための大きな役割を担っているわけです」と、ギレスピー博士は加えて話します。

体重のリバウンドについては、今回の研究課題ではありません。

ですが過去には、「カロリー制限の副作用として、リバウンドが起こる可能性が上がる可能性は無視できない」と問題視する研究も存在します。「カロリー制限を行えば、急激な減量が可能となるのは確かなこと。ですが減量後に、カロリーの摂取量を元通りに戻すことで再び体重は増加するわけですが、その中身は筋肉ではなく、主に脂肪となる可能性が大なのです」と、ギレスピー博士はさらに言います。

そして、このようなカタチで体重のアップダウンを繰り返せば、やがて筋肉量は減少を続け、身体組成(筋肉・脂肪・骨・水分など、身体を構成する組成分=体組成)に問題が生じる危険性を示唆しています。

改善策

活動的な人にとっては、1日あたり800キロカロリーという数字が十分でないことは明白と言えます。では実際に、私たちの肉体はどの程度のカロリー量を必要としているのでしょうか? 「1500キロカロリーでも不足」とする研究もあるようです。

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必要なカロリー量の正確な数値は、当然のことながら性別、年齢、体重、活動レベルなどさまざまな要因に応じて異なります。

健康的に体重を維持することを目指す場合、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では1日の推定エネルギー必要量を身体活動レベル「ふつう」の場合…

となっています。

ちなみに海外の場合、「活動的な男性の場合なら1日あたり3000キロカロリーまで」、同じく「活動的な女性の場合であれば2400キロカロリーまで」が目安になると、『アメリカ人のための食生活指針:2015~2020年版』には記されています。

もちろん、自身にとって最適な摂取カロリー量を把握するためには、栄養士などの専門家に意見を求めることが最もおすすめとなります。それを踏まえた上で、皆さんも自身の1日の摂取カロリー数を再検討してはいかがでしょうか。

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Source / BicyclingTranslation / Kazuki Kimura※この翻訳は抄訳です。