高齢・男性アスリートには栄養教育が必要 世界マスターズ大会での食事調査で明らかに

高齢アスリートの食事摂取状況が報告された。第8回世界マスターズに参加した3カ国の男性アスリートが調査に協力。主観的調査では89%が適切な食生活を送っていると回答したが、客観的調査では65%は食事の質が低いと判定された。著者らは高齢アスリートに対する健康教育戦略が必要とされると述べている。ポーランドのポズナン体育大学の研究グループの報告。

世界マスターズ室内陸上競技大会の開催中に調査を実施

この研究は、2019年にトルン(ポーランド)で開催された、第8回世界マスターズ室内陸上競技チャンピオンシップ中に実施された。調査には3カ国の選手が協力した。女性と男性の双方を対象としたが、結果的に女性の参加者が少なく解析に不十分だったため、男性のみを解析対象とした。

解析対象は、ポーランド51名、フランス14名、イギリス21名の計86名。平均年齢は約50歳で、マスターズアスリートとしてのキャリアを41~43歳にスタートしており、経験年数は7~8年だった。身長は177.4~177.9cm、体重は75.5~77.9kgであり、平均BMIは基準範囲内だったが、37%が過体重または肥満に該当した。体脂肪率は15.2~16.7%、除脂肪体重は63.7~65.4kg。これらの値に所属国別の有意差はなかった。

100点満点のスコアで食生活の質を評価

食生活の質の評価には、ポーランドで開発された調査票が用いられ、インタビュー形式で毎日の食事回数、食品の摂取頻度などを質問し、その回答を健康的食事指数としてスコア化された。

健康的食事指数は、健康に良いとされる10のカテゴリー(全粒粉パン、低精製度穀物、牛乳、発酵飲料、カード〈チーズの元。凝乳〉ホワイトミート〈鶏むね肉〉、魚介類、マメ科植物、果物、野菜など)の食品の摂取頻度から算出される。各カテゴリーの食品の摂食頻度を、食べない、月に1~3回、週に1回、週に数回、1日に1回、1日に数回から選択してもらい、合計スコアが100点となるように設定されている。33点以下は食生活の健康度が「低」、34~66点は「中等度」、67点以上は「高」と判定する。

 高齢・男性アスリートには栄養教育が必要 世界マスターズ大会での食事調査で明らかに

主観的な評価と客観的な評価が大きく乖離

調査結果について、まず主観的な評価の回答をみてみると、89%は自分の食生活が「良好」または「非常に良好」と回答した。1日の食事回数は、4食が最多(43%)で3食もほぼ同率(43%)だった。ポーランドのマスターズアスリートでは、年齢と食事回数との間に有意な負の相関が観察された(r=-0.338,p=0.015)。

健康的食事指数は3カ国ともに「低」

次に、客観的な指標である健康的食事指数をみると、国別ではポーランドが25.50点、フランス29.75点、イギリス31.00点であり、いずれも「低」の評価だった。国による有意差はなかった。回答者全体でみると、65%は「低」と判定され、食事の質が「高」に該当するアスリートは存在しなかった。

食事の質を規定する食品の摂取頻度を国別に検討したところ、ポーランドでは10カテゴリーすべての食品の摂取頻度が健康的食事指数の規定に関連していた。一方、イギリスでは、果物と野菜の摂取頻度のみが健康的食事指数を規定し、他の8カテゴリーは健康的食事指数の規定に関連していなかった。フランスでは、全粒パン、発酵飲料、カード、ホワイトミート、マメ科植物、果物が有意に関連していた。

重回帰分析の結果、ポーランドのマスターズアスリートの食事の質には、果物、低精製度穀物、カード、野菜、牛乳、全粒パン、ホワイトミート、発酵乳飲の8食品群がそれぞれ独立して関連しており、これら8群で食事の質の99.2%を説明可能だった。フランスでは、カード、ホワイトミート、果物という3食品群がそれぞれ食事の質と独立して関連し、この3食品群で食事の質の89.8%を説明可能だった。イギリスでは果物と野菜の2つが独立して食事の質に関連し、前者で40.2%、後者で12%、双方で食事の質の52.2%を説明可能だった。

年齢や食事回数と食品別摂取頻度の関連

魚介類と野菜の摂取頻度は国により有意な差が認められ、ポーランドのアスリートはフランスのアスリートよりも魚介類の摂取頻度が有意に低く、また野菜の摂取頻度はフランスとイギリス双方のアスリートよりも有意に低かった。

このほか、年齢や食事回数と食品別摂取頻度の関連では、ポーランドでは前述のように、年齢が高いほど食事回数が少ないという有意な負の相関が観察された。1日の食事回数は、全粒パン、牛乳、発酵飲料、果物の摂取頻度との間に有意な正相関が認められた。

それに対してフランスでは、1日の食事回数が多いほど発酵飲料の摂取頻度が低いという、有意な負の相関が認められた。同様にイギリスでは食事回数が多いほど牛乳の摂取頻度が有意に低く、一方でカードの摂取頻度は食事回数が多いほど有意に高かった。またイギリスでは、年齢が高いほど全粒パンの摂取頻度が低いという有意な負の相関も認められた。

マスターズアスリートに健康教育の機会を

以上の結果から著者らは結論を以下のようにまとめている。

この研究は、大半のマスターズアスリートの食事の質が高いとは言えないことを示している。とくに、全粒穀物、乳製品、および魚介類の少なさが顕著だった。また魚介類と野菜の摂取頻度には国による統計的有意差が認められた。食事の質の決定要因は国によって異なっていたが、果物の摂取頻度はすべての国で食事の質を決定する要因の一つだった。

マスターズアスリートに対する、不適切な食生活を変えることを目的とした健康教育戦略の開発が必要とされる。

文献情報

原題のタイトルは、「Pro-Healthy Diet Properties and Its Determinants among Aging Masters Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Jul 17;18(14):7614〕原文はこちら(MDPI)

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【 スポーツ栄養Web編集部 】