たんぱく質の推奨量を満たすには1日何品食べるべき?:京都亀岡研究
高齢者がたんぱく質摂取推奨量を満たすためには、1日20品目以上を目安に食事を取ると良いことを示唆するデータが報告された。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の渡邉大輝氏らの研究によるもので、「Geriatrics & Gerontology International」2月号にレターとして研究結果が掲載された。
筋肉量や筋力は30歳過ぎから低下し始め、高齢になるとその影響が顕著に表れ、人によってはサルコペニアやフレイルによる要介護リスクが高まる。
それに対して、たんぱく質摂取量と除脂肪体重(筋肉や骨などの重量)には用量反応関係があることがメタ解析から報告されており、たんぱく質をしっかり摂取することが、高齢者にとって重要と考えられる。
たんぱく質摂取量の目安として、厚生労働省が5年ごとに策定している「日本人の食事摂取基準」の最新版(2020年版)では、高齢者に対し男性60g/日、女性50g/日という推奨量を示している。
一方、食事の多様性が高い高齢者ほど身体能力が高く関連することが、日本人対象の研究結果として報告されている。
よって、たんぱく質摂取量を確保するには、食事の品数が多い方が有利と考えられる。しかし、1日に何品目の食事を取れば、「日本人の食事摂取基準」の推奨量を満たせるのかというカットオフ値は分かっていない。渡邉氏らは、このカットオフ値を明らかにする目的で、以下の検討を行った。
検討には、京都府亀岡市で行われている「京都亀岡研究」のデータを用いた。京都亀岡研究は、介護予防の推進と検証を目的として2011年にスタートした前向きコホート研究。
今回の研究では、2012年5~6月の7日間の食事記録のデータが利用可能な、65~88歳の高齢者143人(女性65人、男性78人)を解析対象とした。
その平均年齢(標準偏差)は73.2(5.3)歳、BMIは22.8(3.2)kg/m2だった。食品数は、2013年に実施された国民健康・栄養調査で使用された評価方法を基に算出した。
食事記録から、対象者の平均エネルギー摂取量(標準偏差)は1,943(301)kcal/日であり、1日の摂取品目数は23.1(7.3)品目、1日の摂取たんぱく質量は73.6(12.7)g/日であった。
女性の13.4%、男性の18.1%が、前記のたんぱく質摂取推奨量を満たしていなかった。
ROC解析の結果、たんぱく質摂取推奨量を満たすための食品数のカットオフ値は、女性、男性ともに20品目であることが分かった(女性は感度60.9%、特異度67.2%、男性は感度63.4%、特異度71.0%)。
ROCのAUCは女性0.702(95%信頼区間0.631~0.774)、男性0.738(同0.686~0.789)と計算された。また、食品数を1つ増やすと1日のたんぱく質摂取量が、女性では2.4g(同1.5~3.2)、男性では2.2g(同1.5~2.9)増加することも分かった。
1985年に厚生省(現:厚生労働省)が発表した「健康づくりのための食生活指針」では、バランスの良い食事のために1日30品目を摂取することが推奨されていた。
ただし、この値のエビデンスが不十分なことから、この推奨は改訂された2000年版では削除され現在に至っている。
米国心臓協会でも、さまざまな食品数を摂取する食事の多様性が成人の体重増加や肥満と関連する可能性が示唆されるため、肥満予防の効果的な戦略ではないことが示されている。それに対して今回の研究から、1日20品目がたんぱく質摂取量に関する目安になることが示された。
著者らは、「肥満よりも痩せの問題を有する高齢者においては、食品の多様性が体重の増加や必要なたんぱく質摂取量の確保に有効である可能性がある。1食につき7品目として、1日3食食べることで、高齢者のサルコペニアやフレイルを予防できる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2022年2月28日)
Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.14345
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構成/DIME編集部