「Pixel 6」のカメラ・ボイスレコーダーを試す。望遠は4倍以上のズームが実用的に(石野純也)

チップセットからカメラまでを丸っと刷新したグーグルのフラッグシップモデル「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」が、間もなく発売になります。本機の発売に先立ち、実機を試用することができました。ここでは、その先行レビューをお届けしていきます。

まずは外観から。これまでのPixelはどことなく柔らかなデザインで、誤解を恐れず言えば、無印良品的な上質感を持った端末でしたが、Pixel 6/6 Proではそれを一新。フラッグシップモデルのスマホらしい、金属やガラスをふんだんに使った“ゴージャスさ”が取り入れられています。カメラ回りも、カメラバーにすべての要素を収めているところが、Pixelらしい工夫と言えるでしょう。

これまでのPixelのテイストを好んでいたユーザーからは賛否両論な意見が出そうですが、筆者はフラッグシップモデルには価格相応の豪華さが必要という立場。

これまでのPixelは、aシリーズのような廉価モデルにはフィットしていた一方で、フラッグシップモデルはどこか価格と不釣り合いになっている印象を受けていました。Pixel 6/6 Proでテイストを変えてきたことで、値段に見合った所有欲を高めるデザインになったと評価しています。

注意したいのは、Pixel 6がフラットディスプレイなのに対し、Pixel 6 Proはディスプレイの左右がカーブしているところ。個人的には操作上の支障はまったく感じませんでしたが、カーブディスプレイが苦手という人はProを避けた方がいいかもしれません。Proはディスプレイサイズが6.7インチと大きいため、そのぶん手へのフィット感を高めるために、こうしたデザインが採用されていると見てよさそうです。

自社設計のチップセット「Tensor」を採用し、ゴリゴリに機械学習への最適化を進めたPixel 6/6 Proですが、その実力をすぐに体感できるのが、文字入力です。

これまでのGoogle音声入力とは違い、Pixel 6/6 Proには新バージョンのものが搭載されており、オフラインでも入力を行えます。処理速度は非常に速く、しゃべっていくだけで文章が完成するのはさすがPixel。以下は、スクリーンレコードでその様子を収録したところ。話した言葉が、瞬時に文字になり、正しい候補に変換されていくことが分かります

▲音声入力が強化され、非常に素早く、かつ正確に入力できるようになった

しかも、これ、画面右上を見ていただければ分かるように、フライトモードになっています。つまり、音声入力はすべてオンデバイスで処理しているということ。サーバーとやり取りしなくても、ここまで正確、かつスピーディに音声入力ができるのはTensorの実力と言っていいでしょう。

この音声入力機能は、文字入力だけでなく、「レコーダー」アプリにも活かされています。レコーダーの文字起こしもオンデバイスで行っているため、フライトモード中でも利用が可能。サーバーと音声ファイルをやり取りする必要がないため、通信量の節約になる上に変換速度が速く、しゃべったそばからすぐに文字になっていく様子が分かります。

ただし、こちらの精度はまだまだ改善の余地あり。試しに、10月25日にドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの統合を発表した記者会見を現地で録音してみましたが、誤認識が多く、そのままではメモとして使い物になりません。

ざっくりとどんな内容だったかの概要はつかめますが、元の音声に当たらなければ怖くて使えないのが正直なところです。

ちなみに、以下は筆者が質問した際の文字起こしですが、まず名前が「石野」ではなく、「一種の」になっているところでズッコケてしまいました。


 「Pixel 6」のカメラ・ボイスレコーダーを試す。望遠は4倍以上のズームが実用的に(石野純也)

「ドコモの下にレストラン」という謎のワードもありますが、これは山王パークタワーの地下にあるとんかつ店や焼肉店の話でしょうか(笑)。ディテールが信用できず、聞き直しが必要というのは、こういった結果からもお分かりいただけると思います。一方で、まあまあ早口でしゃべっていたOCNやOCNモバイルONEなどの固有名詞をしっかり拾っていたり、全体として質問の意味はつかめたりするぐらいの精度は出ています。

いったん文字起こししてしまえば、検索も簡単にできるので、頭出しが簡単にできるのもメリット。人間が取るメモのようなものを期待していた向きには少々残念な結果かもしれませんが、仕事の効率を上げるぐらいでよしとするのであれば、十分役に立ちそうです。日本語の文字起こしは英語に比べると難しいと言われていますが、その中でここまでの結果を、しかもオンデバイスの機能で出せたのはPixel 6/6 Proに搭載されたTensorのおかげと言えそうです。

AI、機械学習を使ったカメラ機能も試してみました。まず、トライしたのが、背景に写り込んだ人をバッサリ消すことができる「消しゴムマジック」。こちらは、カメラそのものの機能というより、Googleフォトアプリに実装された機能で、過去に別の端末で撮った写真にも適用できます。例えば、こんな写真で背景にボケた人が何人か写っている場合、自動的にその人が認識され、跡形もなく消すことができます

元々のデータとしては、消えた人の背後が写っていなかったので、これはAIで書き足しているということでしょう。そのためか、写真によっては不自然な仕上がりになってしまうケースもあります。特にツーショットで写った内の片方を消すといったことをすると、背景がめちゃくちゃになってしまいます。一方で、写り込みの消し方はかなりキレイ。拡大してみなければ、元々そこに人がいたことは分かりづらいと思います

モーションモードも、Pixel 6/6 Proからの新機能。こちらは、「アクション パン」(流し撮り)と「長時間露光」を選択できる仕様です。夜景を撮って車がビュンビュン走っているように見せたいときや、被写体の動きを強調したいようなときに活躍します。

アクション パンの方は効果のかかり方がやや不自然になるときもありましたが、長時間露光は割と成功率が高い印象。以下のような写真が簡単に撮れる機能として、重宝します。

AIを活用した機能として、実用的なのはPixel 6 Proの超解像ズームです。ハードウェアとして光学4倍の望遠カメラを搭載しているPixel 6 Proは、超解像ズームとの組み合わせで最大20倍までズームすることが可能になっています。以下は、超広角の0.7倍、1倍、2倍(デジタルズーム)、4倍、20倍でそれぞれ撮った写真。0.7倍では拡大しなければ見えなかった東京タワーの1本1本の鉄骨まで、しっかり写せています

ややデジタルズーム感はあるものの、ディスプレイに等倍表示するぐらいであれば解像感は十分。20倍ものズームは出番があまりないかもしれませんが、4倍以上のズームがかなり実用的になったのは評価したいポイントです。メインのカメラもセンサーサイズが大型化して背景ボケがキレイに出るようになり、総じてカメラのクオリティが大きく上がっています。

グーグルらしい進化を遂げたPixel 6/6 Proですが、難点を挙げるとすると、指紋センサーの精度の悪さと遅さです。

Pixel 6/6 Proは同シリーズとして初めて画面内指紋センサーを採用していますが、この反応がとにかく悪く、PINを入力したり、パターンを描いてロックを解除した方がスムーズなほど。ディスプレイ下のセンサーの場合、センサーの位置が画面を見なければ分からないため、使い勝手の悪さに拍車をかけています。

たとえば、シャープの「AQUOS R6」に搭載された「3D Sonic Max」や、最近の端末で多い電源キー一体型の指紋センサーを採用していれば、この使い勝手はもう少しよくなっていたような気がします。

指紋センサーは、スマホを使おうとするたびに使う機能。それだけに、この精度に関してはぜひ改善してほしいところです。ソフトウェアの進化で何とかなるような話であれば、ぜひアップデートで解決してほしいと感じています。

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