Expectations for Shinjo Big Boss! Economic Effects of LA Rams' "Stadium Park"

ロサンゼルス・ラムズのホームスタジアム「SoFi Stadium」、ラムズはロサンゼルスに

新庄ビッグボスにも期待! LAラムズの

2月13日に米カリフォルニア州イングルウッドにある「SoFiスタジアム」で開催された第56回スーパーボウルは、ロサンゼルス・ラムズがシンシナティ・ベンガルズを下して2021~22年シーズンのNFL王者になった。【写真】Samsungの「Infinity Screen」今年のラムズのスーパーボウル出場はスポーツファンだけではなく、ビジネスマンの間でも注目を集めていた。同チームが民間による巨大な再開発プロジェクトの一部に組み込まれているからだ。日本でも新ポールパークを建設する日本ハムが新庄ビッグボスで話題を集め、移転先の北広島で新たな街作りが進み始めているが、それと同じような、しかしハリウッド級のプロジェクトが展開している。2016年にミズーリ州セントルイスからロサンゼルスに移転してきたラムズは、2021~22年シーズンからオーナーのスタン・クロエンケ氏が建設を手がけたSoFiスタジアムを本拠にしている。昨年7月にこけら落としが行われた同スタジアムはNFL最大で、建設費も突出して最大の55億ドル(約6350億円)と言われている(2位のAllegiant Stadiumは19億ドル)。市からの財政支援はなし、全て民間資金で建てられた。しかし、ラムズの2020年の営業利益は3,700万ドル(Statista。これはスタジアムの建設費用のわずか0.7%だ。ラムズだけではなく、ロサンゼルス・チャージャーズもSoFiスタジアムを使用しているものの、NFLのレギュラーシーズンの試合数は17試合だけ。NFLチームのスタジアム事業にSoFiスタジアム建設の投資はあまりにも巨大だ。一体なぜ……となるが、それはSoFiスタジアムのみでそろばんを弾いた場合で、クロエンケ氏はスタジアムを含む一帯をハリウッドパークとして再開発している。SoFiスタジアムがあるイングルウッドはロサンゼルスの南西にある都市で、低所得者層の割合がやや高いロサンゼルス近郊の開発途上エリアだった。そこの競馬場跡地でハリウッドパーク建設のプロジェクトは進められている。約310エーカーの敷地の広さはディズニーランドの約3倍。スタジアムはコンサートや他の大型イベントに用いられ、50万平方フィートの商業施設のエリアがあり、2,500戸の住宅も建てられる予定だ。ハリウッドやロサンゼルスのすぐ近くという地の利を活かし、スポーツだけではなく音楽、ファッションやアートのトレンドを発信するエンターテインメントの拠点を目指している。オープンエアーのSoFiスタジアムは約7万席の収容能力を持ち、最大10万席まで拡張可能。260のスイートルームと13,000席以上のプレミアムシートを備える。フィールドの上には7万平方フィートにも及ぶSamsungの「Infinity Screen」が吊り下げられている。オーバル状につなげられた両面ディスプレイで、そのユニークな形状を活かした映像で観客を楽しませる。スタジアム内は完全デジタル化されていて、チケットはモバイル形式のみ。スタジアム内の決済も基本キャッシュレスで行われる。これからはスポーツイベントやコンサートなどが高解像度のHDR映像でストリーミング配信されることが増える。それらを支える高速で信頼性の高いユーザー体験を提供するデジタルインフラをCiscoとAmpThinkが構築した。ラムズが「ロサンゼルス・ラムズ」になるのはこれが2度目だ。1994年シーズンの後、カリフォルニア州アナハイムを本拠にしていたロサンゼルス・ラムズがミズーリ州セントルイスに移転した。ロサンゼルスはNFLチームにとって難しい都市なのだ。人口は多いものの、成績が振るわないとファンがそっぽを向き興行成績が急降下してしまう。そんなNFLチームに対して市はスタジアムの改修や建設に消極的で、1994年のシーズン後には当時ロサンゼルスを本拠としていたレイダースもオークランドに去って、ロサンゼルスのNFLチームがなくなってしまった。東京からプロ野球チームがなくなるようなものである。そんなロサンゼルスにNFLチームが復活したのはNFLの力ではない。市がNFLスタジアムへの財政支援に消極的な状況に変わり中、民間資金のみの力で巨大なスタジアムパークを作るプロジェクトからラムズがスーパーボウルを制覇したのは、スポーツ産業とエンターテインメントの変化を象徴する出来事といえる。クロエンケ氏のプロジェクトとラムズは、大型スーパーで利益度外視で販売される特売品に喩えられている。ハリウッドパークのプロジェクトが大型スーパーで、話題性に価値があるラムズはイングルウッドに関心を持つお客さんを集めるための特売品というわけだ。これを成功例に、今後は大都市の中心ではなく、郊外の都市にコミュニティ色の強いスタジアムが建設されるようになる可能性が指摘されている。これからSoFiスタジアムの完全デジタル化をハリウッドパーク全体に拡大し、環境にも配慮したスマートシティの実現を目指している。NFLスタジアムに消極的な市もハリウッドパークには興味津々で、SoFiスタジアムは2028年のロサンゼルス・オリンピックの開会式・閉会式の会場になる予定だ。オリンピックまでに地下鉄も整備される。スーパーボウルは出場チームのホームスタジアムで行われるのではなく、シーズン開始前に開催会場がスケジュールされている。SoFiスタジアムでスーパーボウルが行われる今年、ラムズがスーパーボウル出場を果たしたことで、ラムズは本拠地でスーパーボウルを戦った。それはNFLの歴史の中でたった2度しか起こっていないことだ。それがSoFiスタジアムのこけら落としのシーズンと重なり、完成したばかりのスタジアムが大きな注目を浴びた。狙っていても実現するのが難しい、幸運も必要な出来事である。ラムズとSoFiスタジアムは今年、チームが生み出す利益よりはるかに大きな価値をハリウッドパークにもたらした。

Yoichi Yamashita