誰だって大変身ストーリーは大好きだ。数年前、パーソナルトレーナーで変身のスペシャリスト、クリス・パウエルが『Extreme Makeover Weight Loss Edition』という番組を司会した。
クリスはフィットネストレーナーで妻のハイディ・パウエルの協力で、クライアントをコーチし、彼らの体重を落とすのを助けた。だが、クリスは多くのクライアントのダイエットを成功させたにもかかわらず、番組自体は楽しくも気晴らしになるものでもなかった。参加者全員が望み通りの体重まで落としたわけではなく、なかには減った体重がまた戻った人もよくいた。
厳しいエクササイズ計画に加え、クリスは参加者全員が体重を落とすよう“炭水化物サイクル”という特別なダイエット方法を用いた。
自身のブログで、炭水化物サイクルは「身体組成を変え、締まった筋肉を作り、代謝をより効果的に高め、体を高度に反応がいい脂肪燃焼マシンにしていく」と彼は断言している。
でも、本当にこのダイエットが痩せたいという祈りに対する答えになるのだろうか?
そこで、炭水化物サイクルについて知っておくべきことと、実際にトライしてみる時に鍵となるヒントをまとめてみた。
炭水化物サイクルとは具体的にどんなもの?
炭水化物サイクルに正式な定義はないが、ほとんどの炭水化物サイクルダイエットは、炭水化物をたくさん摂る日とあまり摂らない日を交互に繰り返す。タンパク質の摂取を一定にし、低炭水化物の日は脂質を増やし、高炭水化物の日は減らす。
炭水化物は体が生き延び、エネルギーを供給する上で必要な主要栄養素だ。各主要栄養素は体内で特定の役割を果たすが、どれも十分に摂らなかったり摂り過ぎたりすると、食生活で炭水化物やタンパク質、脂質をコントロールする時に問題になる。
オンラインにさまざまな炭水化物サイクル計算機が出ていて、その日の主要栄養素の必要量を大まかに分析してくれるが、これらは有効なツールとはみなされていない。
炭水化物サイクルはどのように機能するの?
炭水化物を使ってメリットを最大限に引き出すというのが、炭水化物サイクルの理論。
ほとんどの炭水化物サイクルダイエットの原則はエクササイズを中心に展開していて、体が必要とするカロリーと炭水化物にマッチさせるのを目的としているので、活動的でない人や、1週間のほとんどをデスクワークで過ごしている人には向かない。
高炭水化物の日は、高強度インターバルトレーニングやウエイトリフティングなど激しいワークアウトをする日と組ませる。高炭水化物の日の目的は、筋グリコーゲンに燃料を補給して、エクササイズのパフォーマンスを向上させ、回復を助けようとするものだ。
低炭水化物の日は、休息の日、あるいは軽いジョギングや短時間のヨガクラスなど軽いアクティビティをしている日のために設定されている。
低炭水化物の日は、主として脂肪を燃料として使うのが目的で、炭水化物サイクルダイエットの支持者は、それが潜在的に代謝の順応性を向上させるのに役立つという。通常は、高炭水化物と低炭水化物の日を1日おきに実行する。
炭水化物サイクルダイエットのビギナーの標準的な1週間は以下のような感じだ。
月曜日:高炭水化物
火曜日:低炭水化物
水曜日:高炭水化物
木曜日:低炭水化物
金曜日:高炭水化物
土曜日:低炭水化物
日曜日:高炭水化物か、ご褒美の日
その人のライフスタイルに合わせて、パウウェルは5つの異なるタイプの炭水化物サイクルプランを提供している。なかには低炭水化物の日を連続にし、その後で高炭水化物を連続する、あるいはその逆のプランもある。
炭水化物サイクルはケトジェニックダイエットや断続的断食と同じ?
完全に同じではない。ケトジェニックダイエットは炭水化物を少なく、脂質を非常に多く摂取し、タンパク質は中程度に摂取することにフォーカス。体が脂肪を燃料として使い、ケトーシスの状態にするのが目標だ。
ケトジェニックダイエットは炭水化物摂取量を毎日、非常に少なく制限しなければならず、中程度や高炭水化物の日がない点で、炭水化物サイクルダイエットとは異なる。
加えて、炭水化物サイクルの低炭水化物の日ですら、ケトジェニックダイエットより炭水化物量が多いのが普通だ。
どちらのダイエットも炭水化物摂取量をコントロールし主要栄養素を重視することで効果を出すのは同じである。
ひとつ注意したいのは、炭水化物は体内に水分を運ぶので、炭水化物を制限し始める人の多くが最初は体内の水分の重さが減るだけで、必ずしも脂肪量は減らないということだ。
断続的断食ダイエットは食事時間のタイミングを中心にしたアプローチで、断食時間と食べてもいい時間の間隔が指定されている。
通常は、炭水化物サイクルプランでは1日に何度か食べるよう求められていて、食事時間の制約がない。なかには断続的断食と炭水化物サイクルを同時に行っている人もいるが、長期的に持続するのは非常に難しく、その2つはまったく別のダイエット法と考えられている。
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比較的新しいダイエット法なので、低炭水化物と高炭水化物を交互に実践する効果については、まだ限られた研究しかなされていない。
自分で炭水化物サイクルにトライするなら、短期間だけやってみるのがベスト。長期的にやった場合にどうなるか、まだわかっていないからだ。
もちろん、どんなダイエットでも始める前やエクササイズを変える前にはまず、医師に相談すること。糖尿病や、過去に血糖値の問題があった人の場合、炭水化物摂取量が上下する炭水化物サイクルはおすすめできない。
他に欠点としては、計画を立てるのが非常に難しいことと時間がかかることだ。主要栄養素を計算するのはただ事ではなく、正確に量をコントロールすることが必要なので、長期的に持続するのが難しいのだ。さらに長期的に見て、感情面の影響が出るかもしれない。
「主要栄養素をカウントすることや炭水化物サイクルは制限ダイエットです。食事制限には、摂食障害に発展する可能性のある深刻な副作用があります」とは、インチュイティブ・イーティング(直感に従った食べ方)の専門家ウィロー・ジャローシュ。
「計測に取り憑かれたりすることなく、ライフスタイルに決まり事を取り入れることに柔軟性のある人は炭水化物サイクルのようなことをできるかもしれませんが、多くの人はできません」とジャローシュは言う。
最後にもうひとつ、炭水化物サイクルで大事なことは、体重減が起こるメカニズムだ。
カロリー摂取量を一定にしているプランもあれば、低炭水化物の日は低カロリーにして、高炭水化物の日はカロリーも増やしているプランもある。
カロリーを平均にして炭水化物サイクルを1週間行った場合、カロリー不足そのものが体重減につながるのであって、炭水化物をコントロールするからではないかもしれない。
結論
炭水化物サイクルにトライするなら、栄養豊富な繊維質たっぷりの炭水化物が腹持ちがいいのでおすすめだ。特に低炭水化物の日にいい。
炭水化物はどれも同じではない。ダイエット中は繊維質豊富な野菜や果物、全粒穀物で満腹感やエネルギーを高めることが必要だ。加えて、高炭水化物の日は手に負えなくなり、糖分がたっぷり添加された食品を食べてしまいがちだ。
ダイエットや栄養には万人に効果のある方法がひとつあるわけではない。人はそれぞれ必要な栄養が異なるから、どんなダイエットを始める場合でも、公認栄養士に相談して専門家のアドバイスを受けるのがベストだ。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Translation: Mitsuko Kanno From Good Housekeeping