「外出自粛期間の間に体重が増加した…」、という声が多く聞こえてきます。より薄着になる夏本番のために、ダイエットに励もうとする人も多くいらっしゃることと思います。運動をして痩せるには、有酸素運動が最適と言えるでしょう。が、その中でも「サイクリング」と「ランニング」は多くの人にとってなじみがあり、始めやすいエクササイズです。
このふたつの運動、どちらがより効果的なのかご存知でしょうか? そこでこのページでは、比較的始めやすい身近な有酸素運動という共通点を持つ「サイクリング」と「ランニング」を4つのテーマを基に比較し、どちらがより効果的なのかご紹介します。
体力やスタミナをつけたい場合
◇サイクリング◇
いわゆる「体力」「精力」または「持久力」を意味する「スタミナ」も一緒につけたいと思う方には、「自転車のトレーニングは効果的」と言えるでしょう。2008年の北京五輪で自転車競技のイギリス代表コーチを務めたマット・パーカー(Matt Parker)氏は、「サイクリングは身体に負担が掛かり過ぎないので、1回のエクササイズを長時間続けることができます。スタミナを鍛えるのに、とても良い運動方法です」と、その利点を語ります。
◇ランニング◇
「膝や腰を痛める方が少なくない上に、ランニングだけでは体力がつきにくい」とされています。イングランドサッカー協会やイギリスオリンピック協会でも活躍し、英国国立スポーツ医学研究所でも勤務するニック・グランサム(Nick Grantham)氏は次のように語ります。「ランニングは、筋肉痛と筋肉損傷につながる恐れがあります。サイクリストが長く歩き続けることができるのも、決して不思議ではありません」
⇒ 結論:体力UPに効果的なのは、サイクリング。
筋肉を鍛えたい場合
◇サイクリング◇
「自転車を漕ぐときは、臀部(でんぶ)、ふくらはぎ、太ももの筋肉を刺激します。オリンピアンや競輪選手の下半身を見てもわかるように、両足には鎧のような筋肉が発達していますよね」とパーカー氏は説明します。
補足すると、サイクリング時に特に働く筋肉は「大腿(だいたい)四頭筋」です。筋肉が下半身に集中してしまうため上半身もトレーニングを怠らず、アンバランスな身体に見えないようにバランスをとることもお忘れなく。
◇ランニング◇
ランニングで筋肉はつくのでしょうか? ランニングで刺激されるのは、主に下半身(臀部・ふくらはぎ・太もも)の筋肉と体幹部(腹筋・背筋)となります。ところが、下半身や体幹部への負荷はほとんど変わることがないので、筋肉が肥大化することはほぼ期待できないと考えておきましょう。
⇒ 結論:筋肉に効果的なのは、サイクリング。
Buda MendesGetty Imagesより多くのカロリーを消費したい場合
消費カロリーは、下記の計算式で求めることができます。
消費カロリー(kcal)= METs × 運動時間(h)× 体重(kg)× 1.05
ここで登場するMETsとは「Medical Evangelism Training & Strategies」の頭文字で、身体活動の強度を示す単位。厚生労働省の定義では、「安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するか? で活動の強度を示したもの」とされています。
エクササイズの種類によって、METsの値は決まっています。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所が紹介しているMETs値は
となります。しかしながら、消費カロリーを算出する際の鍵となるMETs値は、同じ運動であっても、その強度や環境によって細分化されています。
例えば、一般的なサイクリングのMETs値は8.0ですが、より険しい山道のサイクリングのMETs値は8.5となります。さらに過酷な山道を登るサイクリングのMETs値は、14へと跳ね上がります。ランニングも同様です。一般的な走りのMETs値は7.0ですが、時速8キロメートルに速度を上げるとMETs値は8.0へと上昇します。
つまり、運動の環境・条件・乗り方・走り方によって、METs値は変わってくるわけです。少なくとも、それぞれの運動において一般的な負荷レベルで考えるなら、「サイクリングのほうがカロリー消費の効率は良い」と言えそうです。
⇒ 結論:カロリー消費量が多いのは、サイクリング。
できるだけ怪我を避けたい場合
◇サイクリング◇
自転車は、足(および脚全体)でペダルを回転させる運動がメインとなります。ランニングに比べると、膝や関節への負担が少ない運動と言えます。
◇ランニング◇
ランニングは慣れない間は、「膝を痛めやすい運動」のひとつと言われています。特に着地する際に膝にかかる負荷は、瞬間的ではあるものの体重の約3倍にも達するというデータもあります。
「地面に着地する際の衝撃で、関節に負荷がかかります」と、ロンドン中心部のハーレーストリートで勤務する足の外科医のサイモン・コンスタイン(Simon Constain)医師は話します。また一般的に、マラソンランナーはレース中に約1センチメートル身長が縮むことも明らかになっています。これは、胸椎や腰椎などの脊髄の間にある椎間板が圧縮されるために起こる現象と考えられています。ちなみに翌日には、その縮んだ身長は元に戻ると言われています。
⇒ 結論:怪我の心配が少ないと考えられるのは、サイクリング。
最後に…
このページでは、「体力・スタミナ」「筋肉」「消費カロリー」「怪我の少なさ」という4つの軸から、サイクリングとランニングを比較してきました。今回設定した4つのテーマでは、全てサイクリングの方が効果的という結果となりました。が、それらだけでは優劣をつけられないのもまた事実です。
例えば、ランニングの効果は身体だけでなく、「脳」にも表れるという報告がいくつかの研究によってなされています。ランニングをすると、主に「海馬」と「前頭葉」が鍛えられることはよく知られています。「海馬」は記憶力を司り、前頭葉は集中力や発想力、判断力や思考力などを司っています。
また2020年2月には、国立障害者リハビリテーションセンター研究所の研究グループが、「軽いジョギングで着地時に頭に伝わる衝撃が、脳機能の維持・調節に関係していることを分子の仕組みとともに発見した」という研究成果を発表しています。
さらに、ロンドンの会員制ジム「Third Space(サードスペース)」でパーソナルトレーナーを務めるレオ・サベージ氏によると、ランニングは骨密度を高める効果も期待できると言います。その上、ランニングはサイクリングよりも必要なアイテムが少ないので、手軽に始められる点もメリットとなるでしょう。
サイクリングにせよランニングにせよ、無理のない範囲でご自身に合ったエクササイズを始めてみてください。その際、「サイクリングのほうが身体の器官に対して、少しだけ良い効果が期待できる」ということを、頭の片隅に入れておくといいでしょう。
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