年が明け、多くの競技は短いオフを経て、来シーズンを見据えた準備期に突入。1年をとおして戦うカラダの基礎づくりは、今から春の試合期までに取り組むべき課題の一つだ。そこで、カラダの基礎づくりに欠かせない、ウエイトコントロールを大特集。理想のカラダを実現し、パフォーマンスアップにつなげよう!
目次実践ウエイトコントロール
シーズン中は、カラダづくりよりも試合を見据えた練習や試合後の疲労回復などコンディショニングを優先したい。そのため、オフ明けから基礎体力を強化する準備期に、年間を通して戦えるカラダのベースを固めておこう。
【増】摂取量アップ、筋合成の効率化を図る「コツコツ習慣」
主な競技▶︎▶︎筋量を増やしたい階級系の重量級、瞬発系、混合系、球技系競技の選手など
理想的なペースは1か月1㎏増8~12週間かけて目標を達成大前提として、筋肉量の増加は食事だけでは叶いません。筋肥大のためのトレーニングを行うと同時に、過不足なく食事からエネルギーを摂りましょう。増量の目安は1 か月で1㎏ペース以内とし、8~12 週で目標を達成するプランを立てるとうまくいきます。筋肥大を叶えるには長期間かかるので、じっくり取り組みましょう。
摂取エネルギー量を増やしてカラダを大きくする場合も、余計な体脂肪をつけないためにも適量を知ることが大切。アメリカの栄養士会では1 日あたり、男性は+400 ~500kcal、女性は+300 ~400kcal、体重や筋肉量が増えにくい人でも最大1000kcal を目安としています。
夜遅くに夕飯を食べる場合、たんぱく質のおかずを増やすのは逆効果。就寝時までにしっかり消化されず、睡眠が浅くなる、胃もたれするなどの原因に。結果、朝に食欲がわかず、1 日の食事・たんぱく質の摂取量が減ってしまいます。たんぱく質は炭水化物と組み合わせて、朝食にしっかり摂るほうが得策。どうしても食欲がわかないという人は、バナナ+ヨーグルト、卵かけ納豆ご飯など、喉を通りやすい軽食から始め、徐々に食べる量を増やしていきましょう。
筋肉量増には1日の摂取エネルギー量を増やすことが必要。しかし1食あたりの食事量を増やして も、上手く消化吸収できなければ、意味がありません。そんな時は補食を組み合わせましょう。3 食+補食の1 日5~7食に分けて必要なエネルギー量を摂ると、内臓への負担も少なく、しっかり消化・吸収されます。
①朝練前/ヨーグルトとバナナ(補食)②朝練後/学食で朝定食(朝食)③1限後/カステラと牛乳(補食)④昼/高エネルギーな唐揚げ定食(昼食)⑤夕練前/パンとオレンジジュース(補食)⑥練習後/おにぎり・プロテイン(補食)⑦帰宅後/低脂肪な焼き魚定食(夕食)※補食は糖質とたんぱく質をセットで摂ると、筋肉量&体重アップに効果的!
プロテインを飲んでいてもなかなか筋肉がつかない、体重が減ってしまう人は、そもそも1 日に必要なエネルギー量が摂れていないかもしれません。「少量でたくさんエネルギー量が摂れる」と、揚げ物などの脂質の多いものや甘いものを摂りすぎて栄養バランスが崩れてしまうのもカラダづくりにはマイナスです。
また、実は自分では食べているつもりでも、「朝は忙しくて、朝食は抜いている」「夜は疲れてしまい、少量しか食べていない」というケースは多くみられます。一度、エネルギーの収支バランスがプラスになっているか否か、食べる量、食事の内容を見直して。
筋肉増量を狙う場合、1 日に必要なたんぱく質量は体重1㎏あたり2g 程度。例えば体重70kg の人であれば140g が必要です。たんぱく質は一度にまとめて摂るより、分けて摂る方が筋肉の合成率は上がります。たんぱく質は3 食+補食で、できるだけ均等に摂るようにしましょう。
また、筋肉増量は様々な栄養素が働いてこそ叶います。必要量を1 日の食事のなかでできるだけ均等に摂り、筋肉の合成に必要な糖質、ビタミン、ミネラルも一緒に摂るようにしましょう。
【減】消費量アップ、摂取量ダウンを狙う「チリツモ作戦
主な競技▶︎▶筋肉量を維持しつつ脂肪を落としたい持久系、審美系、採点系競技の選手など
減量は増量と異なり、食事の量をコントロールし、かつ部活動と日常生活の活動量でエネルギーを消費すれば着実に成果が得られます。厳しい食事制限やファスティングなど、一見、短期間で体重を落とせそうな方法は、筋肉量を削るうえ、健康上の危険もはらむため、安易に手を出さないようにしましょう。
体脂肪1㎏あたりのエネルギー量は7500kcal です。例えば1日-250kcal であれば2か月で-2㎏の計算で、運動と食事、飲み物からコツコツとエネルギーをマイナスしていきます。適切な減量のプランですが、アメリカスポーツ医学会では摂取エネルギー量は通常時よりも1日-250~500kcal、3~6週間以上かけて減量することを推奨しています。
飲み物はふだんからエネルギーのないものだけを摂りましょう。練習量が少なく、発汗量が少ない時は水分補給もスポーツドリンクではなく、水や麦茶でOK。長時間の高強度の練習時や、エネルギーが切れそうになったらスポーツドリンクに切り替えて。日々、無意識に飲んでいた「たった一口」の中身を変えていくだけで、摂取エネルギー量はしっかり減らせます。
糖質量をカットする場合、減らす順番は「甘いものから減らす」がセオリー。「お菓子を食べたいからご飯を減らす」のはNG です。どうしてもお菓子を食べたいのであれば、ご飯を食べてからにすること。日々の食事量から考えて、食べる量はきちんと決めましょう。
穀類、野菜、キノコ類、海藻類に含まれる食物繊維は余分な脂肪や糖の吸収を抑えてくれるため、しっかり摂ることを心がけましょう。エネルギーを抑えるためには、食物繊維が摂れる穀類を減らすのではなく、少量で高エネルギーな脂質から減らします。ただし脂質も摂取量をゼロにするのはNG。脂質は脂溶性ビタミンの吸収を高める、ホルモンの生成などにも必要。脂質の少ないたんぱく源に変更する、揚げ物を食べる頻度を減らすなどで、なるべく控えるようにしましょう。
柴崎真木さん【管理栄養士】アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。
※2022年1月15日発行「アスリート・ビジョン#24」掲載/この記事は取材時点での情報です。