お酒を飲むと太るのか、太らないのか。肥満を予防するためには、お酒も控えたほうがいいのか? これは酒好きにとっては大問題です。そこで、酒ジャーナリストの葉石かおりさんが、酒と肥満の関係についての最新研究に詳しい、ナビタスクリニック理事長の久住英二さんに話を聞きました。
できれば「アルコール由来のカロリーでは太りにくい」という説を信じたいのだが…(写真はイメージ=123RF)「酒はエンプティカロリーだから太らない」
こんな話を聞いたことはないだろうか。
これを信じ、「酒だけを飲む分には太らないから大丈夫」と豪語してつまみなしで飲み続ける酒豪もいるが、お腹はポッコリである。
エンプティカロリーとは、カロリーがゼロ(空=エンプティ)という意味。この連載でも過去に取り上げたことがある(「『お酒で太る』はホント? ウソ?」を参照)。
お酒に含まれる純アルコール(エタノール)には、1g当たり7.1kcalのエネルギーがある。ところが、このうち70%ほどは代謝で消費されることが分かっている。そのため、同じカロリーを脂質や糖質でとったときよりも、体重増加作用が少ないのではないか、というのが「エンプティカロリー説」である。
筆者はスマートフォンのアプリで食事と体重の管理を行っている。食べたものや飲んだお酒などについて入力すると、その日に摂取した総カロリーが計算される。だが、もし「エンプティカロリー説」が本当なら、お酒を飲んでもアプリに入力しなくてもいいんじゃないか、という気になってしまう。
実際、「今日は糖質ゼロのハイボールだし、カウントしなくていいや」と自己判断し、入力しないことも。そのせいもあってか、アプリによる管理を始めてから体重が人生最大値より8kgやせたものの、それ以降はなかなか減らない。しかも、ここにきて中性脂肪がやや高めになっており、何だかお腹回りもポチャッとしてきたような……。
コロナ禍で酒量が増えている人が多い今こそ、ネットでも散見する「エンプティカロリー説」の真偽と、「お酒を飲むと太るのかどうか」について明らかにしておかねばならない。この問題に詳しい、ナビタスクリニック理事長の久住英二さんにお話を伺った。
先生、酒好きの間で、「酒はエンプティカロリーだから太らない」という説が信じられているのですが、実際はどうなのでしょう?
「お酒はエンプティカロリーではありません。当然、太ります。お酒に含まれるエタノールはれっきとしたエネルギー源です。お酒を飲むときはおにぎりを食べるのと同じ感覚で、太ると思って飲んだほうが賢明です」(久住さん)
おにぎりを食べるのと同じ感覚で……!?
「文部科学省の食品成分データベースによれば、ビール1缶(355mL)にはアルコールが14g、糖質が11~12g含まれ、エネルギーは150kcal前後になります。同様に、ワインだと小グラス1杯(118mL)で90~100kcal、日本酒1合が200kcal近くです。コンビニで売られているおにぎりは、1個当たり170~180kcalぐらいですから、ほぼビール1缶、日本酒1合、ワイン2杯と同程度ということになります」(久住さん)
「酒はエンプティカロリーではない」と明言されることは覚悟していたが、糖質のかたまりであるおにぎりと同じ土俵で考えなくてはならないなんて(涙)。
先生、糖質ゼロのハイボールや本格焼酎であれば、カロリーとしてカウントしなくていい、なんてことはないのでしょうか?
「残念ですが、それもありません。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は糖質はゼロですが、アルコール由来のカロリーがあります。糖質が含まれていないお酒なら太らないのではなく、お酒そのものが太るということです。糖質ゼロだからと安心して飲み過ぎたら元も子もないですよね」(久住さん)