腹部脂肪のAI自動測定によって将来の心血管疾患発症を予測

身長と体重から算出するBMIは、心血管疾患発症の手軽な予測指標として頻用される。一方、同量の筋肉と脂肪を「リスクとして同質」と評価する当該指標では、予測精度に一定の限界があることも想像に難くない。一方、腹部のCTスライスを活用することで、皮下脂肪・内臓脂肪・筋などを領域ごとに捕捉・定量できるが、手動での評価には時間とコストがかかり過ぎる側面があった。

腹部脂肪のAI自動測定によって将来の心血管疾患発症を予測

米マサチューセッツ州ボストンに所在するBrigham and Women’s Hospitalの研究チームはこのほど、腹部CT画像の自動体組成分析による脂肪コンパートメントから、心血管疾患の発症を高精度に予測できるとする研究成果を公表した。研究チームは、2.3万人に対して施行された3.3万件の腹部CT画像を利用してこの成果を導いたという。主要な心血管疾患や悪性腫瘍を持たない1.2万人では、CTスキャン撮像後5年以内に1,560件の心筋梗塞と938件の脳血管疾患発症を確認した。自動測定された内臓脂肪量は「将来の心血管疾患発症および脳血管疾患発症」と有意に関連しており、体重やBMIといった既存指標よりも高い予測精度を持つことを明らかにしている。

研究を率いたKirti Magudia氏は「この研究は既存の画像データから新しい情報を抽出することにより、臨床ケアに付加価値を与えるAIツールの可能性を示している」とし、医療システムへの増分コストを最小限にしながら、患者ケアを向上させる点に言及している。

ShareFacebookTwitterEmailPrint前の記事バイアスを含むAIが人類の希望となる可能性について次の記事肺塞栓症のAI画像診断を改善 – AidocとImbioのシステム統合TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。1. 岡本 将輝信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、現在は米マサチューセッツ総合病院研究員、ハーバードメディカルスクール・インストラクター。他に、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。2. 杉野 智啓防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。RELATED ARTICLESもっと読む